無機化学

水酸化マンガン(II)の化学的性質と合成

水酸化マンガン(II)の化学的性質と合成
水酸化マンガン(II)(Mn(OH)2)の化学的性質、結晶構造、合成方法、および空気中での酸化反応について解説します。

📌 主なポイント

  • 化学式は Mn(OH)2 であり、2価のマンガンを含む水酸化物である。
  • 天然ではキミマン鉱(pyrochroite)として産出する。
  • 空気中で容易に酸化され、褐色に変色する性質を持つ。
  • 六方晶系の水酸化カドミウム型構造をとる。

水酸化マンガン(II)(Manganese(II) hydroxide)は、化学式 Mn(OH)2 で表されるマンガンの水酸化物です。天然にはキミマン鉱(pyrochroite)として産出する鉱物でもあります。

合成方法

水酸化マンガン(II)を合成する際は、空気中の酸素による酸化を防ぐため、酸素を排除した環境下で行う必要があります。塩化マンガン(II)の希薄水溶液に、酸素を含まない炭酸塩や過剰の水酸化カリウム水溶液を加え、水素気流中で加熱した後に冷却することで結晶が析出します。

水酸化マンガン(II)の合成反応式
Mn2+(aq) + 2OH-(aq) → Mn(OH)2

物理的および化学的性質

純粋な水酸化マンガン(II)は淡桃色を帯びた白色の結晶または粉末です。結晶構造は六方晶系の水酸化カドミウム型構造をとっており、格子定数は a = 3.34 Å、c = 4.68 Å です。

この物質は空気中で非常に不安定であり、酸素と反応して容易に3価や4価の水和酸化物へと変化し、褐色を呈します。

水酸化マンガン(II)の酸化反応式
4Mn(OH)2 + O2 → 4MnO(OH) + 2H2O

水酸化鉄(II)と比較すると還元作用は穏やかですが、塩基性条件下では還元剤として機能します。標準酸化還元電位は -0.25 V です。

標準酸化還元電位
E° = -0.25 V

水に対する溶解度は低く、溶解度積(Ksp)は 1.6 × 10^-13 です。希酸やアンモニウム塩水溶液には容易に溶解します。また、希アルカリ水溶液にはほとんど溶けませんが、熱濃アルカリ水溶液にはわずかに溶解し、マンガン(II)酸塩を生成します。

酸化還元反応式
Mn2O3 + 3H2O + 2e- ⇌ 2Mn(OH)2 + 2OH-
溶解平衡式
Mn(OH)2 ⇌ Mn2+(aq) + 2OH-(aq)
マンガン(II)酸塩生成反応式
Mn(OH)2 + OH- ⇌ [Mn(OH)3]-

よくある質問

水酸化マンガン(II)は空気中で安定ですか?
いいえ、空気中で非常に酸化されやすく、3価や4価の水和酸化物へと変化して褐色になります。
水酸化マンガン(II)の天然鉱物名は?
天然鉱物としてはキミマン鉱(pyrochroite)として知られています。
水酸化マンガン(II)は水に溶けますか?
水にはわずかにしか溶けませんが、希酸やアンモニウム塩水溶液には容易に溶解します。

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参考文献

  • D.D. Wagman et al., J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  • 日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成I』 丸善、1977年
  • 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  • Allen J. Bard et al., Standard Potentials in Aqueous Solution, Marcel Dekker Inc (1985).
  • H. Freiser, Q. Fernando著、『イオン平衡 -分析化学における-』 化学同人、1989年
  • FA コットン, G. ウィルキンソン著、『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年