地形学
海成段丘:海岸線に形成される階段状地形のメカニズム

海成段丘(海岸段丘)の定義、形成メカニズム、地殻変動や海水準変動との関係について解説します。過去の海底面が離水して形成される階段状地形の構造を詳しく紹介します。
📌 主なポイント
- ✓海成段丘は、かつての海底面が離水して形成された階段状の地形である。
- ✓主な形成要因は、氷期・間氷期の海水準変動と地殻の隆起運動の組み合わせである。
- ✓標高の高い段丘面ほど形成年代が古く、地殻変動の歴史を解明する重要な指標となる。
海成段丘(かいせいだんきゅう、英: marine terrace)は、海岸線に沿って発達する階段状の地形です。かつては海岸段丘という呼称が一般的でしたが、現在ではその成因をより明確に示す「海成段丘」という用語が専門的に用いられています。この地形は、かつて浅い海底であった平坦面が、地盤の隆起や海水準の低下によって離水し、陸地化することで形成されます。
構造と形成プロセス
海成段丘は、平坦な「段丘面」と、その陸側にある急峻な「段丘崖」が組み合わさることで階段状の景観を呈します。段丘面は過去の海底面であり、段丘崖は現在または過去の海食崖に相当します。段丘面と段丘崖の境界にある傾斜の急変点は「旧海岸線(旧汀線)」と呼ばれ、過去の海面位置を示す重要な指標となります。

海成段丘の形成には、氷期・間氷期の繰り返しに伴う海水準変動と、地殻の隆起運動が深く関わっています。特に第四紀以降、間氷期の海面が高い時期に形成された段丘面は保存されやすく、地殻隆起が継続している地域では、標高が高いものほど形成年代が古いという特徴的な多段構造が見られます。
関連する小地形
海岸線付近の岩石海岸には、海食崖の基部から浅海底に向かって広がる平滑な地形が見られます。これらは波食棚(shore platform)や海食台(abrasion platform)などと呼ばれ、浸食作用によって形成されます。

波食棚は海側に明瞭な小崖を持つことが特徴であり、ポットホールや波食溝などの微地形が発達することもあります。これらを含めた岩石海岸の平坦な侵食地形全体を「海食台地」と呼ぶこともあります。

日本における代表的な例
日本列島はプレート境界に位置し、活発な地殻変動があるため、各地で顕著な海成段丘が観察されます。
- 三陸海岸北部:北山崎など、大規模な段丘崖が発達しています。
- 房総半島南部:地震による間欠的な隆起が繰り返されており、複数の段丘面が確認できます。
- 室戸半島:海溝型地震に伴う隆起により、最終間氷期の海成面が標高約200mに達しています。
- 能登半島:2024年の能登半島地震による隆起で、新たな段丘面が形成された事例が報告されています。

よくある質問
海岸段丘と海成段丘の違いは何ですか?
基本的に同じ地形を指しますが、海岸段丘は地形の形状に着目した呼称であり、海成段丘は「海成(海によって形成された)」という成因を重視した呼称です。現在は学術的に海成段丘が一般的に用いられます。
海成段丘はどのようにして階段状になるのですか?
地殻の隆起が継続する中で、氷期・間氷期による海面の昇降が繰り返されることで、異なる時期の海岸線がそれぞれ段丘面として陸上に残るため、階段状になります。
海成段丘から何がわかりますか?
段丘の標高や形成年代を調査することで、過去の地殻変動の速度や、地震による間欠的な隆起の履歴を推定することが可能です。
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参考文献
- 松倉公憲『地形学』朝倉書店、2021年、229–230頁。
- 日本地形学連合・鈴木隆介・砂村継夫・松倉公憲編『地形の辞典』朝倉書店、2017年、77頁「海成段丘」(著者:宮内崇裕)。
- 地学団体研究会編『最新 地学事典』平凡社、2024年、233–234頁「海成段丘」(著者:太田陽子)。
- 国土地理院『土地条件調査解説書 宮崎地区』2013年。