天然資源
松脂(マツヤニ)の特性と産業的利用

マツ科の樹木から得られる天然樹脂「松脂(マツヤニ)」の成分、性質、および工業製品から伝統工芸まで多岐にわたる用途について解説します。
📌 主なポイント
- ✓松脂は主にテレビン油(精油成分)とロジン(固形樹脂成分)から構成される。
- ✓英語圏では海軍軍需品を指す「ネーバルストアーズ」という名称で歴史的に分類されている。
- ✓工業用途では接着剤、インキ、ハンダフラックス、ゴムの乳化剤など多岐にわたる分野で利用される。
松脂(まつやに、英: Pine resin)は、マツ科マツ属の樹木から分泌される天然樹脂です。古くから木造船の防水材や塗料として利用されてきた歴史があり、英語では海軍軍需品を意味する「ネーバルストアーズ(Naval Stores)」とも呼ばれます。

成分と物性
松脂は主に、約15%の精油成分であるテレビン油と、75〜85%の固形樹脂成分であるロジン、および少量の脂肪酸で構成されています。これらは蒸留プロセスを経て分離・精製されます。
世界中で100種以上の樹種から採取されますが、市場で流通するものは限られています。樹種によってジテルペン酸(樹脂酸)の構成割合が異なり、これが最終製品の物性や品質に影響を与えます。一方、テレビン油はモノテルペン炭化水素やセスキテルペン類を主成分とする液体であり、樹種によって成分構成が異なります。


産業的および日常的な用途
松脂から得られるロジンは、その粘着性や化学的特性を活かし、広範な産業分野で利用されています。
- 工業用途:製紙用サイズ剤、合成ゴム用乳化剤、塗料、インキ、接着剤、ハンダフラックス、塩ビタイルなど。
- 精製加工品:テレビン油は香料、殺菌剤、農薬、情報用紙用薬剤の原料として活用されます。
- スポーツ・音楽:野球のロジンバッグ(滑り止め)や、弦楽器の弓の摩擦を高めるための塗布剤として用いられます。

また、日本伝統の弓道においては、弽(ゆがけ)の滑り止めとして「ギリ粉」と呼ばれる、松脂を煮切って粉末状にしたものが使用されます。
よくある質問
松脂の主な成分は何ですか?
主に約15%のテレビン油(精油成分)と、75〜85%のロジン(固形樹脂成分)で構成されています。
松脂はどのような産業で使われていますか?
製紙、塗料、インキ、接着剤、合成ゴムの製造、ハンダフラックスなど、化学工業を中心に幅広く利用されています。
弓道で使われる「ギリ粉」とは何ですか?
松脂を煮切って粉末状にしたもので、弓を引く際に使用する弽(ゆがけ)の滑り止めとして用いられます。
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参考文献
- 林 良興「熱帯樹木の成分と利用(4)マツヤニ・天然樹脂(1)」『熱帯林業』第41巻、1998年。
- 川瀬滋「談話室-ロジン誘導体の活用」TIISニュース 2019年277号。
- 笹倉 充義「ブラジルにおける生松脂採集事業」『熱帯林業』第21巻、1991年。
- 荒川化学工業「第81期中間報告書」「第84期中間報告書」。
- 松谷 晃宏「楽器・写真と応用物理」『応用物理』第89巻第10号、2020年。