熱力学
熱力学におけるマクスウェルの関係式

熱力学におけるマクスウェルの関係式について、その定義、数学的背景、および熱力学ポテンシャルとの関連を解説します。
📌 主なポイント
- ✓マクスウェルの関係式は、熱力学ポテンシャルの全微分から導出される。
- ✓数学的には二階偏微分の順序交換可能性(シュワルツの定理)に基づいている。
- ✓直接測定が困難な物理量を、測定可能な量で記述するために用いられる。
熱力学におけるマクスウェルの関係式(Maxwell relations)は、熱力学系の状態関数である熱力学ポテンシャルの全微分形式から導かれる、状態量間の偏微分係数に関する等式群です。これらの関係式は、直接測定が困難な物理量を、温度、圧力、体積といった測定容易な量を用いて表現するために利用されます。
数学的背景
マクスウェルの関係式は、数学における「シュワルツの定理(混合偏微分の順序交換可能性)」に基づいています。ある状態関数 f(x, y) が全微分可能であるとき、その二階偏微分は順序によらず一致します。
すなわち、以下の関係が成り立ちます。
∂/∂y (∂f/∂x) = ∂/∂x (∂f/∂y)
熱力学ポテンシャル(内部エネルギー U、エンタルピー H、ヘルムホルツ自由エネルギー A、ギブズ自由エネルギー G)に対してこの数学的性質を適用することで、マクスウェルの関係式が導出されます。
主要な関係式
代表的な熱力学ポテンシャルから導かれる関係式には以下のようなものがあります。
- 内部エネルギー U(S, V) から: (∂T/∂V)S = -(∂p/∂S)V
- エンタルピー H(S, p) から: (∂T/∂p)S = (∂V/∂S)p
- ヘルムホルツ自由エネルギー A(T, V) から: (∂p/∂T)V = (∂S/∂V)T
- ギブズ自由エネルギー G(T, p) から: (∂V/∂T)p = -(∂S/∂p)T
ここで、T は温度、S はエントロピー、p は圧力、V は体積を表します。添字は、その偏微分において一定に保たれる変数を指します。
応用
マクスウェルの関係式は、実験的に直接測定することが難しいエントロピーの変化などを、圧力や体積、温度の測定値から算出する際に極めて重要な役割を果たします。これにより、物質の熱的性質を理論的に解析する際の強力なツールとなっています。
よくある質問
マクスウェルの関係式は何のために使われますか?
直接測定が難しい物理量(エントロピーなど)を、温度、圧力、体積といった測定しやすい量を用いて計算するために使用されます。
マクスウェルの関係式はどのように導かれますか?
熱力学ポテンシャルの全微分形式に対し、二階偏微分の順序交換可能性(シュワルツの定理)を適用することで導かれます。
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参考文献
- P. A. Atkins, J. de Paula『物理化学(上)』8版、東京化学同人、2009年、105–106頁。ISBN 9784807906956。
- 和達三樹、十河清、出口哲生『ゼロからの熱力学と統計力学』岩波書店、2005年、77頁。ISBN 4-00-006700-1。
- 夏目雄平『やさしい化学物理』朝倉書店、2010年、46頁。ISBN 978-4-254-14083-5。