地理学

モレーン(氷堆石)の概要と形成プロセス

モレーン(氷堆石)の概要と形成プロセス
氷河の移動や後退によって形成される堆積地形「モレーン(氷堆石)」について、その定義、形成メカニズム、および氷河湖決壊洪水との関連性を解説します。

📌 主なポイント

  • モレーン(氷堆石)は、氷河の移動によって運搬・堆積された岩屑や土砂からなる地形である。
  • モレーンを構成する堆積物は、微細なシルトから巨礫まで含み、淘汰が悪いことが特徴である。
  • モレーンによって堰き止められた氷河湖は、決壊による洪水被害を引き起こすリスクがある。

モレーン(英: moraine、日本語訳:氷堆石〈ひょうたいせき〉)とは、氷河の移動や後退に伴って運搬・堆積された岩屑(がんせつ)や土砂によって形成される地形の総称です。氷河が谷を削りながら流下する過程で、周囲の岩石を削り取り、それらを運搬・堆積させることで土手のような地形を形成します。

スイスのツェルマットに見られるモレーン
スイスのツェルマットに見られるモレーン

用語の定義と分類

近年の地形学においては、混乱を避けるために「デブリ」「ティル」「モレーン」という用語を使い分ける傾向があります。モレーンを構成する堆積物は、シルトのような微細なものから巨大な岩塊まで幅広く含まれており、一般的に淘汰(粒径の揃い方)が悪いことが特徴です。

岩田(2011)や小疇(1985)らの研究によれば、氷河地形学においてこれらの用語は、氷河によって運搬される岩屑そのものや、それが堆積して形成された地形を指すものとして整理されています。

カナダのレイク・ルイーズ付近に見られるモレーン
カナダのレイク・ルイーズ付近に見られるモレーン。

氷河湖と決壊のリスク

氷河が後退すると、取り残されたモレーンと氷河の間に空間が生じ、そこに融解水が溜まることで氷河湖が形成されることがあります。このモレーンによって堰き止められた氷河湖は、モレーンの崩壊によって突発的に決壊し、下流地域に甚大な洪水被害をもたらすリスクがあります。

特にヒマラヤ山脈のネパールやブータンなどでは、氷河湖の決壊による洪水で死傷者が出る被害が報告されており、水位の低下対策や監視体制の強化が国際的な課題となっています。

よくある質問

モレーンとティルはどう違いますか?
地形学の文脈では、氷河によって運搬・堆積された岩屑の集合体やその堆積物を指す際に、より厳密に用語を使い分ける傾向があります。一般的にティルは氷河堆積物そのものを指し、モレーンはそれによって形成された地形を指すことが多いです。
なぜ氷河湖は決壊するのですか?
モレーンは氷河の堆積物で形成されており、強固な岩盤とは異なり崩れやすい性質があります。氷河湖の水位上昇や地震、あるいはモレーン自体の浸食や融解によって堰が崩壊し、急激な洪水が発生します。

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参考文献

  1. 小疇尚「氷河地形」『写真と図で見る地形学』東京大学出版会、1985年、116-121頁。
  2. 岩田修二『氷河地形学』東京大学出版会、2011年、201頁、247頁。