運輸多目的衛星(MTSAT)の概要と歴史

📌 主なポイント
- ✓運輸多目的衛星(MTSAT)は、国土交通省航空局と気象庁が共同開発した静止衛星である。
- ✓1号機は1999年のH-IIロケット8号機の打ち上げ失敗により失われた。
- ✓新1号(ひまわり6号)は2005年、新2号(ひまわり7号)は2006年に打ち上げられた。
運輸多目的衛星(MTSAT:Multi-functional Transport Satellite)は、国土交通省航空局と気象庁が共同開発し、宇宙開発事業団(NASDA)および宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた大型の静止衛星シリーズである。
本衛星は、老朽化した気象衛星「ひまわり5号(GMS-5)」の後継としての気象観測機能のほか、衛星通信を利用した航空保安システム(航空管制の航法・通信業務)を同時に搭載することを目的として計画された。気象庁の気象衛星予算に航空局の空港整備特別会計による航空管制衛星計画を相乗りさせる形で開発が進められたため、大型の衛星となった。
運輸多目的衛星1号の打ち上げ失敗
1号機(MTSAT-1)は米国のスペースシステムズ/ロラール社に発注されて製造され、1999年11月にH-IIロケット8号機で打ち上げられた。しかし、第1段エンジンに発生した故障の影響により地上からの指令でロケットが破壊され、ペイロードであった機体も海中に失われた。
この打ち上げ失敗に伴い、打ち上げ代金の支払いを巡って運輸省とNASDAの間で解釈の相違が生じ、東京地裁での民事調停を経て、ロケット製作費等の精算が行われた。
運輸多目的衛星新1号(ひまわり6号)
1号機の代替として再発注された新1号(MTSAT-1R)は、米スペースシステムズ/ロラール社の衛星バス「LS-1300」を採用し、これまでのスピン衛星方式からソーラーセイルを用いた三軸姿勢制御方式へと変更された。観測機器(イメージャ)やチャンネルも拡張され、設計寿命は気象ミッションが5年、航空ミッションが10年とされた。
製造元の破綻やH-IIAロケットの打ち上げスケジュール変更などの影響を受け、H-IIAロケット7号機によって2005年2月26日に打ち上げられ、同年3月8日に静止軌道に入ったことが確認されて「ひまわり6号」の愛称が命名された。2005年6月28日から気象観測運用を開始し、2006年7月からは航空管制の通信業務も開始した。その後、姿勢制御装置の不具合や地上処理システムのトラブル等を経験しつつ運用を続け、気象観測業務は後継機へ引き継がれた後、航空ミッションも2016年末に運用を終了した。
運輸多目的衛星新2号(ひまわり7号)
航空管制業務に最低2基の衛星が必要であることから、三菱電機によって新2号(MTSAT-2)が製造された。衛星バスを共通化する設計が取り入れられ、H-IIAロケット9号機によって2006年2月18日に打ち上げられ、愛称として「ひまわり7号」が命名された。
2007年7月から航空管制業務を開始し、2機体制による安定運用を支えた。気象ミッションについても、ひまわり6号やその後の後継機との間で待機運用や切り替えが行われ、航空ミッションは2020年3月にみちびき3号によるSBAS配信サービスへ引き継がれるまで運用された。
主なミッション内容
MTSATは、気象観測と航空管制という二つの主要なミッションを担った。
- 気象観測ミッション: 可視・赤外・水蒸気チャンネルを備えたイメージャーにより全球観測などを実施し、雲の移動量から風速を解析するウィンドベクトルの算出や気象データの配信を行った。また、離島や船舶からの観測データ中継も行った。
- 航空管制ミッション: 衛星通信を利用して、洋上を飛行する航空機と管制施設間の通信および航法支援を行い、航空交通システムの安全性向上に寄与した。