化学

無機化学における水酸化物の性質と反応

無機化学における水酸化物の性質と反応
水酸化物の定義、溶解度、塩基強度、熱分解、両性水酸化物に関する化学的性質を網羅的に解説する解説記事。

📌 主なポイント

  • 水酸化物は陰イオンとして水酸化物イオン (OH-) を持つ化合物の総称である。
  • アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物は一般に強塩基性を示す。
  • 重金属の水酸化物は一般に溶解度が小さく塩基としても弱い。
  • 水酸化アルミニウムや水酸化亜鉛などは両性水酸化物として振る舞い、過剰な水酸化物イオンと反応してヒドロキシ錯体を形成する。

水酸化物(すいさんかぶつ、英語: hydroxide)とは、化学において陰イオンとして水酸化物イオン (OH-) を持つ化合物の総称である。陽イオンが金属イオンである場合、一般式は Mx(OH)y と表され、多くは塩基性または両性を示す。アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物は強塩基性を示すことで知られている。

水酸化物の熱分解反応を表す化学反応式
水酸化物の熱分解反応を表す化学反応式

なお、英語の "hydroxide" にはアルコールやフェノールなどのヒドロキシ基を持つ有機化合物も含まれる場合があるが、日本語の化学用語としての「水酸化物」にはこれらは通常含まれず、有機化合物のヒドロキシ基は共有結合により母骨格と結びついている。

溶解度と塩基強度

金属イオンの電荷が小さくイオン半径が大きいアルカリ金属の水酸化物は、イオン間の静電気力が小さいため水に対する溶解度が大きく、かつ強塩基である。しかし、電荷が2価のアルカリ土類金属の水酸化物は幾分水に溶解する程度であり、その他の重金属水酸化物では溶解度も小さく塩基としても弱い。

水酸化カルシウムの化学式
水酸化カルシウムの化学式
水酸化マグネシウムの化学式
水酸化マグネシウムの化学式
水酸化マンガンの化学式
水酸化マンガンの化学式
水酸化鉄(II)の化学式
水酸化鉄(II)の化学式
水酸化亜鉛の化学式
水酸化亜鉛の化学式
水酸化銅(II)の化学式
水酸化銅(II)の化学式
水酸化ランタンの化学式
水酸化ランタンの化学式
水酸化アルミニウムの化学式
水酸化アルミニウムの化学式
水酸化鉄(III)の化学式
水酸化鉄(III)の化学式
水酸化物化学式溶解度積水和イオン水和イオンのpKa
水酸化カルシウムCa(OH)25.5×10-5Ca2+12.7
水酸化マグネシウムMg(OH)21.2×10-11Mg2+11.4
水酸化マンガンMn(OH)22.9×10-13Mn2+10.6
水酸化鉄(II)Fe(OH)21.5×10-16Fe2+9.5
水酸化亜鉛Zn(OH)24×10-17Zn2+9.0
水酸化銅(II)Cu(OH)21.9×10-20Cu2+7.3
水酸化ランタンLa(OH)35.2×10-20La3+9
水酸化アルミニウムAl(OH)35×10-33Al3+5.0
水酸化鉄(III)Fe(OH)32.5×10-39Fe3+2.2

水酸化物の溶解平衡は以下の式で表され、水に難溶性のものでも酸性水溶液では水酸化物イオンが消費されて平衡が右辺に偏るため溶解する。

水酸化物の溶解平衡を表す化学反応式
水酸化物の溶解平衡を表す化学反応式

両性水酸化物とヒドロキシ錯体

塩基性の水溶液に対して溶解度が増大する両性水酸化物と呼ばれるものが存在する。水酸化アルミニウムや水酸化亜鉛などはこの性質が著しい。これは、水酸化物に対してより高次の水酸化物イオンの配位が起こり、ヒドロキシ錯体を形成することによるものである。

ヒドロキシ錯体形成の反応式
ヒドロキシ錯体形成の反応式

よくある質問

水酸化物とはどのような化合物ですか?
塩のうち、陰イオンとして水酸化物イオン (OH-) を持つ化合物のことです。
重金属の水酸化物が水に溶けにくいのはなぜですか?
金属イオンと水酸化物イオンの間の静電気力が増大し、d軌道電子などの影響によって結合が共有結合性を帯びるためです。
両性水酸化物とは何ですか?
酸とも強塩基とも反応する性質を持つ水酸化物のことで、強塩基性水溶液中ではヒドロキシ錯体を形成して溶解度が増大します。

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参考文献

日本化学会編『化学便覧 基礎編』丸善。
各化学教科書および信頼できる無機化学資料。