マンセル・カラーシステム:色彩の三属性に基づく表色系の仕組みと歴史

📌 主なポイント
- ✓マンセル表色系は、アメリカの画家・美術教育者であるアルバート・マンセルによって考案された。
- ✓色は「色相」「明度」「彩度」の三属性によって数値や記号で表現される。
- ✓日本ではJIS Z 8721として規格化され、色彩の表示方法として広く用いられている。
マンセル表色系(マンセルひょうしょくけい、英: Munsell color system)とは、色を正確に表示することを目的とした代表的な顕色系の表色系である。色の見え方や人間の知覚に基づいて色を体系化しており、アメリカの画家・美術教育者であったアルバート・マンセルによって考案された。

歴史と発展
マサチューセッツ師範美術学校の美術教授であったアルバート・マンセルは、1898年に色に関する研究を始め、1905年にその成果として『A Color Notation』(色彩の表記)を著して発表した。さらに1915年には『Atlas of the Munsell Color System』という色票集を発表した。

オリジナルのシステムには物理的な表現におけるいくつかの課題が存在したが、1929年に出版された『マンセル・ブック・オブ・カラー』で大幅に改善された。その後、1943年にはアメリカ光学会(OSA)の小委員会による広範な視感評価実験を経て修正が加えられた。この修正されたものは「修正マンセル表色系」とも呼ばれるが、現在では単にマンセル表色系といえばこの修正版を指すことが一般的である。
色彩の三属性による表現
マンセル表色系は、色を理解しやすい「色相」「明度」「彩度」という3つの属性に分けて表現する点が特徴である。
色相 (Hue)
色相は色のまわり合いや種類を区別する属性であり、基本となる5つの色相(R・Y・G・B・P)と、それぞれの中間を補完する5つの色相(YR・GY・BG・PB・RP)を合わせた10の大まかな色相が設定されている。

さらに各色相を10分割し、計100色の細かな色相が定義されている。分割された色相には数字が割り振られ、例えば赤(R)の2番目であれば『2R』のように表記される。
明度 (Value)
明度は色の明るさを表す属性であり、バリュー(Value)とも呼ばれる。無彩色を基準とし、理想的な純黒を「0」、理想的な純白を「10」として、その間の知覚的明るさの差が等間隔になるように尺度化されている。現実に用いられる色票では、黒はV=1、白はV=9.5程度が利用されることが多い。

彩度 (Chroma)
彩度は色の鮮やかさを表す属性である。無彩色を「0」とし、鮮やかさが増すにつれて数値が大きくなる。最高値や最低値は色相や明度によって異なり、およそ8から14の範囲で変化する。
色立体(カラー・ツリー)
色相ごとに最高彩度やその明度が異なるため、マンセル表色系を立体的に表現した色立体は歪な形状となる。その姿が自然界に自生する樹木のように見えることから「カラー・ツリー」とも称される。


色の表記方法
マンセル表色系では、「色相 明度/彩度」の形式で色を表現する(有彩色の場合は「HV/C」とも呼ばれる)。無彩色の場合は色相や彩度が不要なため、「N 明度」の形式で表記される。日本においては、JIS Z 8721(三属性による色の表示方法)の規格として採用されており、カタログや色彩管理などの分野で広く利用されている。