無重量状態のメカニズムと人体への影響

📌 主なポイント
- ✓無重量状態とは、万有引力と慣性力が打ち消し合い合力がほぼ0になっている状態を指す。
- ✓無重力環境では体液が頭部や胸部に移動し、顔のむくみや体液量の減少を引き起こす。
- ✓長期滞在時は骨質量が低下し、1か月あたり約1パーセント減少するとされる。
- ✓JAXAの「きぼう」などに搭載された静電浮遊炉を用いた宇宙創薬などの実験が行われている。
無重量状態(むじゅうりょうじょうたい)とは、万有引力および遠心力などの慣性力が互いに打ち消し合い、それらの合力が0ないしは0とみなしうる程度に小さくなっている状態を指す。台ばかりで測定されるような重量が失われていることからこのように呼ばれ、同義語として「無重力」や「微小重力」という語が用いられることもあるが、重力そのものが消失しているわけではない。

無重量環境下では、無対流、無静圧、無浮力、無沈降、無接触浮遊といった特徴が表れ、地表の重力下では実現できない現象の観察や工業材料・医薬品の製造等への利用が行われている。
人体への生理学的影響
長期間にわたる微小重力環境への曝露は、人体のさまざまな器官に特有の変化を引き起こす。

体液循環においては、地上では下半身に分布していた水分のうち約2リットルが、無重力状態になると数分で胸部や頭部へと移動する。これにより顔のむくみや首・顔の血管の浮き出しが生じ、鼻閉による嗅覚や味覚の低下を招く。また、体液量の増加と調節機能により尿量が増加し、全身の血液量や体液量自体も減少する。さらに、脊椎の椎間板が圧迫を受けなくなるため、身長が1〜2センチメートルほど伸びる現象が知られている。
造血系や筋骨格系への影響も大きい。赤血球の数は無重力下で減少傾向を示し、4日以内に始まり40〜60日程度で安定する。骨組織においては、負荷の減少によって骨の質量が1か月に約1パーセントの割合で失われ、カルシウムの排出に伴う腎臓結石のリスク増加や骨粗鬆症の懸念が生じる。筋肉組織の萎縮や心筋の弱化も起こりうるため、宇宙飛行士は運動を行うことで対策を講じている。
国際宇宙ステーション (ISS) 滞在を終えた古川聡は、会見において「宇宙は老化の加速モデルだと実感した」と体調の変化について語っている。
無重量状態の再現と実験手法
地上で微小重力環境を作り出すためには、航空機の放物線飛行(パラボリックフライト)、ドロップチューブや落下塔を用いた自由落下、あるいはサンプルを回転させるクリノスタットやランダム・ポジショニング・マシーンなどの装置が利用される。






航空機による微小重力実験は、フランスのノヴァスペース社や日本のダイヤモンドエアサービス株式会社などが研究者向けに受託している。
科学的利用と宇宙環境での現象
国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」では、微小重力環境を利用した様々な実験が実施されている。静電浮遊炉(ELF)を用いた実験では、容器からの不純物混入を防ぎながら試料を浮遊させることができるため、新材料の開発やタンパク質の結晶化といった宇宙創薬に役立てられている。

また、無重力下では表面張力によって水が球体になり、上昇気流が発生しないために炎も球形になるなど、地上とは異なる特異な物理現象が観察される。
よくある質問
無重量状態と無重力状態の違いは何ですか?
無重力環境にいると身長が伸びるのはなぜですか?
宇宙空間での実験はどのような分野に利用されていますか?
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参考文献
- 日本大百科全書『無重量状態』Yahoo!百科事典。
- 「宇宙は老化の加速モデル」ISS滞在終えた古川さん、会見で体調変化語る - Science Portal(2024年)
- 無重力では子供できない⁉ 哺乳類の場合 - 読売新聞(2009年)
- 浜崎辰夫, 佐藤温重「模擬微小重力実験装置 “培養細胞観察型クリノスタット”」1992年。
- ダイヤモンドエアサービス株式会社 航空機使用事業 μG実験。
- 「きぼう」での実験/静電浮遊炉(ELF) - JAXA。
- 宇宙創薬、巡航軌道へ - 日経産業新聞(2018年)
- 無重力で蜂蜜の瓶を開けると……宇宙飛行士が披露 - BBC。