政治学

ナショナリズム:政治思想と運動の概念

ナショナリズム:政治思想と運動の概念
ナショナリズムの定義、歴史的背景、およびネイション(国民)という概念が近代社会においてどのように形成・発展したかを解説します。

📌 主なポイント

  • ナショナリズムは、政治的単位と文化的単位を一致させようとする政治思想である。
  • ネイション(国民)の概念は、近代社会の産業化や教育制度の発展と密接に関係している。
  • 18世紀後半のフランス革命が、近代ナショナリズムの発展における重要な契機となった。

ナショナリズム(英: nationalism)とは、ある集団を「ネイション(nation)」として捉え、その自己決定や統合、政治的地位の確立を正当化・推進しようとする政治思想や運動を指します。日本語では文脈に応じて国家主義、民族主義、国民主義などと訳されます。

用語の定義と概念

「ネイション」の語源はラテン語の「nātĭō(生まれ)」に由来します。ナショナリズムの定義は多岐にわたりますが、アーネスト・ゲルナーは「政治的な単位と文化的あるいは民族的な単位を一致させようとする思想や運動」と定義しました。また、スタンフォード哲学百科事典では、ナショナル・アイデンティティへの関心と、自己決定の達成を求める行動という二つの側面から記述されています。

近代性とネイション

学問的には、ネイションとナショナリズムは近代社会の産物であるという見方が有力です。身分制社会から近代市民社会への移行期において、産業化や教育制度の整備に伴い、均質な国民を創出する必要性が生じました。ベネディクト・アンダーソンやアーネスト・ゲルナーらは、この近代的な再編成の過程を重視しています。一方で、アントニー・D・スミスは、近代以前の歴史や神話的遺産である「エトニ」が、近代のネイション形成の核となったと論じ、連続性の側面を強調しました。

歴史的展開

ナショナリズムは、18世紀後半のフランス革命を契機に大きく発展しました。革命が掲げた自由・平等・博愛の理念は、ナポレオン戦争を通じてヨーロッパ各地に広まりました。19世紀には、イタリアやドイツのように、統一市場を求める産業資本家らがナショナリズムに基づく国家統一を推進しました。帝国主義の時代に入ると、各国政府は公教育や社会政策を通じて国民統合を深化させ、これがしばしば他国との競争や植民地獲得といった国威発揚と結びつきました。

多義性と現代的課題

ナショナリズムは、理性や人権を重視する「左翼ナショナリズム」から、排外主義的な「ウルトラナショナリズム」まで多様な形態をとります。また、グローバル化が進む現代においても、特定の地域や文化への帰属意識は依然として強力な政治的動機となっており、ポストナショナリズムや遠隔地ナショナリズムといった新たな議論も展開されています。

よくある質問

ナショナリズムとパトリオティズム(愛国心)の違いは何ですか?
パトリオティズムは郷土や祖国への愛着を指すのに対し、ナショナリズムはネイションの政治的地位や自己決定を追求する政治思想や運動を指します。
ナショナリズムはいつから始まったのですか?
学問的には、18世紀後半のフランス革命以降の近代現象とする見方が一般的ですが、その起源となる歴史的・文化的要素(エトニ)は古代から存在していたという議論もあります。

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参考文献

  • ゲルナー, アーネスト『民族とナショナリズム』岩波書店, 2000年。
  • アンダーソン, ベネディクト『想像の共同体』NTT出版, 1997年。
  • スミス, アントニー・D『ネイションとエスニシティ』名古屋大学出版会, 1999年。
  • 塩川伸明『民族とネイション - ナショナリズムという難問』岩波新書, 2008年。