日本の美術家

名取春仙:大正・昭和期の新版画と挿絵の巨匠

名取春仙:大正・昭和期の新版画と挿絵の巨匠
名取春仙(1886-1960)は、大正から昭和にかけて活躍した日本の版画家、挿絵画家です。特に新版画の役者絵で知られ、近代日本美術におけるその功績と生涯を解説します。

📌 主なポイント

  • 1886年、山梨県生まれの版画家・挿絵画家。
  • 夏目漱石の『三四郎』や『明暗』など、数多くの新聞小説の挿絵を担当した。
  • 渡辺庄三郎のプロデュースにより、新版画の役者絵で高い評価を得た。
  • 南アルプス市立美術館にその画業を伝える作品が収蔵されている。

名取春仙(なとり しゅんせん、1886年2月7日 - 1960年3月30日)は、明治から昭和時代にかけて活躍した日本の版画家、挿絵画家、日本画家です。本名は芳之助。山梨県中巨摩郡明穂村(現・南アルプス市)に生まれ、久保田米僊・金僊父子に師事しました。

挿絵画家としての活動

春仙はジャーナリズムの世界で高い評価を受け、多くの新聞小説の挿絵を手掛けました。1909年に東京朝日新聞社に入社し、夏目漱石の『虞美人草』や『三四郎』、『明暗』、『それから』などの挿絵を担当したことは特筆されます。また、泉鏡花や島崎藤村、石川啄木といった著名な作家の作品にも挿絵を提供し、当時の出版文化を彩りました。

渋川玄耳著、春仙 絵『絵本日本の神様 : 古事記絵はなし』天の沼琴(1918年)
渋川玄耳著、春仙 絵『絵本日本の神様 : 古事記絵はなし』天の沼琴(1918年)

新版画と役者絵

1916年、版元・渡辺庄三郎に見出されたことを機に、春仙は新版画の制作を開始しました。特に歌舞伎役者を題材とした「役者大首絵」は彼の代名詞となり、写実的な表現の中に役者の個性を鮮やかに描き出しました。山村耕花とともに、新版画における役者絵の代表的な作家として知られています。

二世中村鴈治郎の紙屋治兵衛
二世中村鴈治郎の紙屋治兵衛
二世市川左團次「鳴神上人」
二世市川左團次「鳴神上人」
市川壽海「木村重成」(1952年)
市川壽海「木村重成」(1952年)

晩年と遺産

春仙は晩年まで精力的に制作を続け、1950年代には富士山を題材とした風景画なども手掛けました。1960年3月30日、東京都港区にて没しました。その画業は高く評価されており、故郷である山梨県南アルプス市には、その功績を顕彰する南アルプス市立美術館(旧・春仙美術館)が設立され、多くの作品が収蔵・展示されています。

「四匹の子犬」(1950年代)
「四匹の子犬」(1950年代)

よくある質問

名取春仙の代表的な作品は何ですか?
役者大首絵が特に有名で、初代中村鴈治郎の紙屋治兵衛などが代表作として知られています。
名取春仙はどのような画風で知られていますか?
写実に基づきながらも、役者の美しさや芝居の魅力を引き出す、すっきりとした爽快感のある作風が特徴です。
名取春仙の作品を鑑賞できる場所はありますか?
山梨県の南アルプス市立美術館に、春仙の作品を専門的に扱うコレクションが収蔵されています。

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新版画浮世絵渡辺庄三郎夏目漱石南アルプス市立美術館

参考文献

  • デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「名取春仙」の解説(コトバンク)
  • 南アルプス市WEBサイト:名取春仙について 略年譜
  • 20世紀日本人名事典 「名取 春仙」の解説(コトバンク)