気象学

夜光雲:中間圏界面に現れる青白い雲の科学

夜光雲:中間圏界面に現れる青白い雲の科学
地球の大気圏で最も高い高度に発生する雲「夜光雲」について、その形成メカニズム、観測の歴史、および科学的性質を解説します。

📌 主なポイント

  • 夜光雲は地上約75kmから85kmの中間圏界面付近で発生する。
  • 主成分は氷の結晶であり、流星煙粒子を核として形成される。
  • 主に夏半球の高緯度地域で観測される気象現象である。

夜光雲(やこううん、英: noctilucent clouds, NLC)は、地球の大気圏において最も高い高度に発生する雲の一種です。地上約75kmから85kmの中間圏界面付近に形成され、日の出前や日没後に観測される特異な気象現象として知られています。極中間圏雲(PMC)とも呼ばれます。

フィンランド南東部のサイマー湖上空に現れた夜光雲
フィンランド南東部のサイマー湖上空に現れた夜光雲(2003年8月撮影)

観測と歴史

夜光雲が初めて科学的に記録されたのは1885年のことです。イギリスのロベルト・レスリーによる発見以降、研究が進められました。ドイツのオットー・イェッセは、1887年に世界で初めて夜光雲の写真を撮影し、「夜に光る雲」を意味する「noctilucent cloud」という名称を提唱しました。初期にはクラカタウ火山の噴火との関連が議論されましたが、現在では火山活動とは直接的な因果関係はないと考えられています。

AIMが観測した北極周辺の夜光雲
AIMが観測した北極周辺の夜光雲(青白い部分)の分布

1960年代以降、観測ロケットによる調査が進み、中間圏の極低温環境が雲の形成に不可欠であることが判明しました。その後、1972年のOGO-6衛星による宇宙からの観測や、2001年のUARS衛星による成分分析を経て、夜光雲の主成分が氷であることが確定しました。2007年には夜光雲の観測を主目的とする衛星「AIM」が打ち上げられ、その力学的メカニズムの研究が飛躍的に進展しました。

国際宇宙ステーションから撮影した夜光雲
国際宇宙ステーションから撮影した夜光雲

発生メカニズム

夜光雲は、夏半球の高緯度地域(緯度50°~70°付近)の中間圏界面で発生します。この時期、夏極上空の中間圏は断熱膨張により地球大気中で最も低い気温に達します。ここに水蒸気が供給され、微細な流星煙粒子などを核として氷晶が形成されることで雲となります。雲粒の大きさは40~100nm程度であり、太陽光の青い成分を散乱(レイリー散乱)させるため、地上からは青白く輝いて見えます。

デルタIIロケットの排気ガスによる人工的な夜光雲
デルタIIロケットの打ち上げ時の排気ガスでできた人工的な夜光雲(2007年8月撮影)

また、自然発生的なものだけでなく、ロケットの打ち上げに伴う排気中の水蒸気が原因で発生する「人工的な夜光雲」も観測されています。2017年には日本のH2Aロケット打ち上げ時に、関東以西で夜光雲が目撃された事例があります。

エストニアのソーマ―国立公園で見られた夜光雲
エストニアのソーマ―国立公園で見られた夜光雲

よくある質問

夜光雲はなぜ夜に光って見えるのですか?
太陽が地平線の下に沈んでいるとき、高度の高い位置にある夜光雲にのみ太陽光が直接当たるため、周囲が暗い中で雲だけが青白く輝いて見えるためです。
夜光雲の主な成分は何ですか?
科学的な観測により、主に氷(水)の結晶で構成されていることが確認されています。
夜光雲はどこで見ることができますか?
主に北半球および南半球の高緯度地域(緯度50度から70度付近)の夏季に観測されますが、近年ではより低緯度で観測される例も報告されています。

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参考文献

  • World Meteorological Organization. "Noctilucent clouds (polar mesospheric clouds)". International Cloud Atlas.
  • Hervig, Mark et al. (2001). "First Confirmation that Water Ice is the Primary Component of Polar Mesospheric Clouds". Geophysical Research Letters.
  • NASA. "Strange Clouds at the Edge of Space".