気象学
北大西洋振動(NAO)のメカニズムと気候への影響

北大西洋振動(NAO)は、アイスランド低気圧とアゾレス高気圧の気圧差が変動する気象現象です。欧州や北米の気候、海洋生態系に与える影響を解説します。
📌 主なポイント
- ✓北大西洋振動(NAO)は、アイスランド低気圧とアゾレス高気圧の気圧差が変動する現象である。
- ✓NAO指数が正の時は欧州で温和な冬となり、負の時は中欧で厳冬になりやすい。
- ✓NAOは海洋の海水温や塩分濃度を変化させ、タラやズワイガニなどの漁獲量に影響を与える。
北大西洋振動(North Atlantic Oscillation:NAO)は、北大西洋におけるアイスランド低気圧とアゾレス高気圧の気圧配置が連動して変動する大規模な気象現象です。この現象は、大気と海洋の相互作用によって生じるテレコネクションの一種であり、北大西洋周辺地域の気候や風系に多大な影響を及ぼします。

メカニズムとNAO指数
NAOは1920年代にギルバート・ウォーカーによって発見されました。この現象の強弱は「NAO指数」として数値化されます。これはアイスランド低気圧とアゾレス高気圧の間の気圧差を指標としたもので、平年値を基準(0)として算出されます。
- 正の指数(+):気圧差が大きい状態。偏西風が強まり、北大西洋から欧州へ湿った空気が運ばれやすくなります。
- 負の指数(-):気圧差が小さい状態。偏西風が弱まり、気圧配置が大きく変化します。

気候への影響
NAOの影響は特に冬から初春(11月〜4月)にかけて顕著に現れます。正の指数の年は、欧州の西欧や北欧で冬が温和で多湿になり、中欧では冷夏となる傾向があります。一方、負の指数の年は偏西風が弱まるため、中欧では厳冬となり、低気圧の進路が南下することで地中海沿岸や北アフリカで荒天や降雨が増加します。
北米東部においても、NAOは冬の気温に影響を与えます。正の指数の場合、北極からの寒気団の南下が抑制されるため、北米東部では比較的暖かい冬となることが多く、ENSO(エルニーニョ・南方振動)の影響と重なるとその傾向が強まります。
海洋生態系への影響
NAO指数の変動は、海洋環境を通じて水産資源にも影響を与えます。1970年代後半以降、正の指数を示す頻度が高まったことで、ラブラドル海では海水温が低下し、低温を好むズワイガニの漁獲量が増加しました。一方で、タラなどの魚種は適正水温の変化により生息数が減少するなどの影響を受けています。また、セントキルダ群島のソーイ羊の個体数変動とNAO指数の間に相関があることも研究で示唆されています。
よくある質問
NAO指数が正の時、欧州の冬はどうなりますか?
NAO指数が正の時は偏西風が強まるため、西欧や北欧を中心に温和で多湿な冬となる傾向があります。
NAOは北米の気候に影響しますか?
はい、影響します。NAO指数が正の時は北極からの寒気の南下が抑えられるため、北米東部では比較的暖かい冬になる傾向があります。
NAOと北極振動(AO)は関係がありますか?
両者は相関性が深く、NAOは北極振動(AO)の一部であるという見方も存在します。
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参考文献
- Pearson, Aria (2009). "Perfect Storm: Why storms are good news for fishermen". New Scientist.
- Coulson, T. et al. (2001). "Age, Sex, Density, Winter Weather, and Population Crashes in Soay Sheep". Science.
- UK's Climatic Research Unit, Information sheet on the NAO.
- National Center for Atmospheric Research, Overview paper on the NAO.