客観(哲学)
📌 主なポイント
- ✓「客観」という訳語は、明治時代の思想家・西周によって作成された。
- ✓ラテン語の「obiectum」は、元来「向こう側に置かれたもの」を意味し、中世までは主観的表象を指すこともあった。
- ✓近代哲学における「主観」と「客観」の対立構造は、主にカント以降に確立された。
哲学における客観(英: object、独: Objekt)とは、一般に認識の対象となる事象や、主観から独立して存在するとされる事柄を指す概念です。対義語である「主観」(英: subject、独: Subjekt)との関係性は、哲学史を通じて大きく変化してきました。
語源と歴史的変遷
「客観」という訳語は、明治時代の思想家である西周によって作成されました。ラテン語の「obiectum」は、ギリシア語の「antikeimenon(向こう側に置かれたもの)」の直訳であり、アリストテレスの著作においても「対立し合うもの」や「思考・感覚の働きに対置されるもの」という意味で使用されていました。
中世スコラ哲学においては、ラテン語の「objectum」は意識の志向的対象や表象を指す言葉として用いられていました。この時期、近代的な意味での「主観」と「客観」の対立構造は確立されておらず、むしろ「subjectum(主体)」が客観的存在者を、「objectum(客観)」が主観的表象を意味することもありました。
近代哲学における概念の転換
現代的な「主観」と「客観」の対立が明確になったのは、イマヌエル・カント以降のことです。カントは「コペルニクス的転回」を通じて、認識の枠組みにおける主観と客観の役割を再定義しました。これにより、客観的実在は悟性の範疇によって決定されるものと位置づけられました。
カント以降のドイツ観念論において、この概念はさらに発展しました。フィヒテは「主観的観念論」を提唱し、シェリングは主観と客観を両極とする「客観的観念論」を、ヘーゲルは絶対精神の自己展開による説明を試みました。また、新カント派のリッケルトやコーエンらは、客観を認識論的な承認や純粋思惟の産物として捉え直しました。
現代における意義
現代の哲学や存在論においては、認識する側を「主体」、認識される側を「客体」と呼ぶことが一般的です。客観という概念は、認識論において「主観的な偏りから独立した妥当性を持つもの」を指す指標として、現在も重要な議論の対象となっています。
よくある質問
客観と主観の対立はいつから始まりましたか?
客観の語源は何ですか?
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参考文献
- 山口裕之『語源から哲学がわかる事典』日本実業出版社、2019年。
- 平凡社編『哲学事典』平凡社、1971年。
- 岩波書店編『哲学・思想辞典』岩波書店、1998年。
- 細川亮一「客観」『日本大百科全書(ニッポニカ)』DIGITALIO, Inc.