眼外傷の医学的分類と病態について

📌 主なポイント
- ✓眼外傷は、性質上「機械的外傷」と「非機械的外傷」の2つに大別される。
- ✓眼球打撲では、虹彩根部離断や網膜振盪、脈絡膜破裂などの多様な眼内組織の障害が生じる。
- ✓穿孔性眼外傷では角膜や強膜の創縫合および眼内組織の早期修復が必要であり、遅延すると交感性眼炎を発症するリスクがある。
- ✓眼球鉄症は眼内に侵入した鉄片から溶出した第一鉄イオンによる組織障害であり、網膜浸潤により夜盲や視力喪失を引き起こす場合がある。
眼外傷(がんがいしょう)は、眼球自体あるいは眼瞼や涙器などの付属器が外部からの力により損傷を受けた状態の総称です。その性質や原因により、大きく「機械的外傷」と「非機械的外傷」の2つに分類されます。
機械的外傷
機械的外傷は、物理的な衝撃や異物の侵入によって引き起こされる障害です。具体的には打撲傷や振盪症、穿孔性眼外傷のほか、眼内異物が残留することによる二次的疾患が含まれます。眼瞼部の外傷においては内眼角付近の裂創に注意が必要であり、涙小管の断裂を伴うケースが多く、受傷直後の正確な再建手術が求められます。

眼球打撲
眼球打撲は、眼球に対して瞬時に強い外力が作用し、眼球全体が変形することで発生します。眼内の各組織は弾性が異なるため、衝撃によって多様な症状が引き起こされます。
虹彩根部離断や虹彩根部後転が生じた場合には前房出血を併発し、数ヶ月後に緑内障を続発することがあります。また、水晶体脱臼は眼圧上昇の要因となります。眼底においては網膜振盪が生じ、壊死性の網膜裂孔に至るケースがあります。さらに強い衝撃が加わると、脈絡膜破裂や網膜の亀裂性裂孔、硝子体出血を引き起こすことがあります。
脈絡膜破裂
鈍的外力によって眼球後極部の圧力が変動すると、黄斑部を中心とした脈絡膜の最内層にあるブルック膜を含む脈絡膜に断裂が生じます。脈絡膜出血は網膜下腔や網膜、硝子体内に及ぶことが多く、出血が吸収された後には白色の線状や弧状の瘢痕が残ります。脈絡膜断裂が黄斑部、あるいは視神経乳頭と黄斑の間に発生した場合は、著しい視力障害を残すことがあります。
穿孔性眼外傷
角膜や強膜に刺創や切創が生じ、眼内組織が部分的に流出または脱出した状態を穿孔性眼外傷と呼びます。眼内組織の位置異常を引き起こし二次的な障害を招くため、受傷後早期に創部を閉じ、位置異常を軽減・修復する必要があります。
治療ではまず微温滅菌生理食塩水を用いて眼球を圧迫しないように注意しながら創部を洗浄し、手術用顕微鏡下で異物や滲出物を除去します。脱出した虹彩は整復または切除し、角膜創は10-0ナイロン糸で縫合します。強膜創が眼球壁後方に及ぶ場合は結膜を切開して強膜を広く露出させ、7-0〜8-0ナイロン糸で縫合を行います。眼球後半部に及ぶ穿孔創では硝子体出血を伴うことが多く、増殖性硝子体網膜症を続発しやすいため早期の硝子体手術が推奨されます。創の縫合が遅延したり不適切な処置が行われたりした場合には、交感性眼炎を発症するリスクがあります。
眼球鉄症
眼球鉄症は鉄錆症とも呼ばれ、鉄片などの異物が眼球内に侵入した際に発生します。鉄片から第一鉄イオンが溶出し、眼球組織内に浸潤・沈着することで特有の鉄錆色が観察されます。

角膜や水晶体への沈着に加え、網膜に浸潤した場合には夜盲と呼ばれる暗順応の遅延を引き起こし、進行すると失明に至るおそれがあります。緑内障を続発することもあり、異物侵入から発症までは数週間から数年を要します。早期の異常確認には網膜電図が有用であり、鉄片異物を除去した後も網膜電図の異常が改善しない場合にはキレート剤を用いて第一鉄イオンの無毒化を図ります。
非機械的外傷
非機械的外傷は、物理的外傷と化学的外傷に大別されます。物理的外傷には熱傷、超音波、電気性外傷、紫外線やX線などの放射性外傷が含まれます。紫外線による紫外線角膜障害(電気性眼炎や雪眼炎)や日食性眼炎などは一般に予後が良好ですが、眼球熱傷や酸・アルカリによる腐食性眼炎は予後が不良であり、失明に至るケースが多く見られます。酸やアルカリによる化学的外傷を受けた場合は、受傷直後に行う入念な洗眼が極めて重要です。