通信技術

光ファイバーの技術原理、構造および歴史的発展

光ファイバーの技術原理、構造および歴史的発展
光ファイバーの基本構造、伝送損失の要因、シングルモードとマルチモードの分類、および歴史的発展について解説する専門記事です。

📌 主なポイント

  • 光ファイバーはコア、クラッド、被覆の構造を持ち、コアの屈折率を高くすることで光を全反射させて伝搬させる。
  • 光ファイバーの分類には伝送モードによる「シングルモード」と「マルチモード」、素材による「ガラス製」と「プラスチック製」がある。
  • チャールズ・K・カオは1965年にガラスの不純物低減による通信用光ファイバーの可能性を提唱し、2009年にノーベル物理学賞を受賞した。

光ファイバー(optical fiber)は、離れた場所に光を伝えるための伝送路である。JISでは「光ファイバ」と表記される。電磁気の影響を受けずに極細の信号線で高速信号を長距離に伝送できる特性を持つことから、デジタル通信を中心に多くの通信用途で使用されている。

構造と基本原理

光ファイバーは、中心部のコア(core)と呼ばれる芯と、その外側を覆うクラッド(clad)と呼ばれる部分、さらにそれらを保護する被覆の多重構造になっている。クラッドよりもコアの屈折率を高く設計することで、全反射や屈折を利用して光を中心部のコアに閉じ込めながら伝搬させる。

コアとクラッドはともに光に対して透過率が非常に高い石英ガラスまたはプラスチックで構成されている。一般的な石英ガラス製光ファイバーにおけるコアとクラッドの屈折率の差はわずか0.2%から0.3%程度であり、石英ガラスの屈折率はおよそ1.5である。

伝送特性と損失要因

光ファイバー内を光が伝送する際には、様々な要因によって光量が減少する(伝送損失)。損失要因は大きく「素材固有要因」と「外的要因」に分類される。

  • 素材固有要因:紫外吸収や赤外吸収などの吸収損失、ならびにレイリー散乱や非線形散乱(ブリルアン散乱、ラマン散乱など)といった散乱損失が含まれる。
  • 外的要因:遷移金属イオンやヒドロキシ基(OH基)による吸収、構造不完全性や結晶などの異物による散乱、ファイバーの曲げによる放射損失、および接続面での反射(フレネル損失)などが挙げられる。

モードによる分類

光ファイバーのコアを伝搬する光の経路(モード)の数によって、以下のように分類される。

  • シングルモード・光ファイバー:光が単一のモードで伝送される方式。モードフィールド径が細く(ガラス製の場合9.2 μm)、伝送損失が小さいため長距離・大容量通信に適合する。ITU-Tの勧告として標準化されている。
  • マルチモード・光ファイバー:光が複数のモードに分散して伝送される方式。コア径が太く曲げに強い一方、伝送損失が大きく長距離伝送には向かないが、安価で接続が比較的容易である。

素材による分類

ガラス製のほかに、プラスチックを素材としたプラスチック製・光ファイバー(Plastic Optical Fiber)が存在する。ガラス製に比べて伝送損失が大きく長距離高速伝送には向かないが、安価であり、コア径が太く曲げに強く、軽量であるため近距離の伝送に用いられる。

歴史的発展

光をガラス等の導波路に通して伝える試みや理論的背景は19世紀から存在した。1870年にジョン・ティンダルが光の全反射の条件を記し、1910年にはホンドロスとピーター・デバイが光の閉じ込め条件を定式化した。

1958年にはナリンダー・シン・カパニーが異なる種類のガラスで芯を巻くコア・クラッド構造の石英ガラスファイバーを考案し、「オプティカル・ファイバー」と名付けた。1965年、チャールズ・K・カオが論文において、ガラスの不純物濃度を下げて損失率を20 dB/km以下に抑えれば通信用として利用可能であるとの理論を提示し、実用化へ向けた研究が加速した。カオはこの先駆的貢献により2009年のノーベル物理学賞を受賞している。

1970年にはアメリカのコーニング社が損失率20 dB/kmを達成した通信用光ファイバーの実用化を発表した。日本においても、電電公社(現NTT)の茨城電気通信研究所の伊澤達夫らが1977年にVAD法(気相軸付け法)による製造方法を発明するなど、製造技術の高度化が進んだ。1980年代にはエルビウム添加ファイバー増幅器(EDFA)の開発なども加わり、現代のブロードバンドネットワークの基盤が築かれた。

よくある質問

光ファイバーはどのような仕組みで光を伝えているのですか?
中心部のコアとその外側のクラッドの屈折率の差を利用し、クラッドよりもコアの屈折率を高くすることで、全反射や屈折により光を中心部のコアの内部に閉じ込めて長距離に伝送します。
シングルモードとマルチモードの違いは何ですか?
シングルモードは光の伝搬経路が1つであり、伝送損失が小さいため長距離の大容量通信に適しています。一方、マルチモードは複数の経路を持ち、コア径が太く安価であるため近距離通信に適しています。
光ファイバーの伝送損失を引き起こす主な要因は何ですか?
素材固有の要因である各種の吸収や散乱(レイリー散乱など)のほか、ヒドロキシ基による吸収、ファイバーの曲げによる放射損失、接続時の反射やずれなどの外的要因が挙げられます。

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参考文献

  • 須藤 昭一, 横浜 至, 山田 誠 『光ファイバと光ファイバ増幅器』 共立出版, 2006年.
  • The Royal Swedish Academy of Sciences (2009) Scientific Background on the Nobel Prize in Physics 2009: Two Revolutionary Optical Technologies.