化学

オルト炭酸:化学的性質と近年の合成報告

オルト炭酸:化学的性質と近年の合成報告
オルト炭酸(メタンテトラオール)の化学的性質、エステル誘導体、および近年の極低温環境下での合成報告について解説します。

📌 主なポイント

  • オルト炭酸の化学式は H4CO4(C(OH)4)である。
  • 2025年にハワイ大学マノア校の研究チームが極低温・高真空環境下での合成を報告した。
  • オルト炭酸のエステル誘導体(オルト炭酸テトラエステルなど)は比較的安定して存在する。

オルト炭酸(orthocarbonic acid)、別名メタンテトラオール(methanetetrol)は、化学式 H4CO4 または C(OH)4 で表される炭素のオキソ酸です。構造上は最小の4価アルコールとみなすことができ、炭素原子に4つのヒドロキシ基が結合した構造を持っています。

長らく単独での存在は確認されておらず、仮に生成しても速やかに二酸化炭素と水に分解すると考えられてきました。しかし、そのエステル誘導体は比較的安定であり、化学合成の分野で利用されています。

オルト炭酸の分解反応式
オルト炭酸が二酸化炭素と水に分解する反応式

近年の合成報告

2025年、ハワイ大学マノア校の研究チームは、オルト炭酸の合成に成功したと報告しました。この実験では、高純度の水と二酸化炭素からなる氷を、-263℃(10K)以下の極低温かつ10兆分の1気圧以下の高真空環境下に置き、真空紫外領域の放射光を照射することで生成されました。この成果は、宇宙空間の氷の中にオルト炭酸が存在する可能性を示唆しています。

オルト炭酸の立体骨格式
オルト炭酸の立体骨格式

オルト炭酸エステル

オルト炭酸のヒドロキシ基が炭化水素基で置換されたエステルは、安定して存在します。置換されるヒドロキシ基の数に応じて、モノエステルからテトラエステルまで分類されます。

  • オルト炭酸テトラメチル(テトラメトキシメタン):C(OCH3)4
  • オルト炭酸テトラエチル(テトラエトキシメタン):C(OC2H5)4
  • オルト炭酸テトライソプロピル(テトライソプロポキシメタン):C{OCH(CH3)2}4
オルト炭酸のボール・アンド・スティックモデル
オルト炭酸のボール・アンド・スティックモデル
オルト炭酸の空間充填モデル
オルト炭酸の空間充填モデル

よくある質問

オルト炭酸は自然界に存在しますか?
地球上の通常の環境下では不安定で即座に分解しますが、2025年の研究により、宇宙空間の極低温環境下で氷の中に存在する可能性が示唆されています。
オルト炭酸エステルとは何ですか?
オルト炭酸の4つのヒドロキシ基の一部または全部が炭化水素基で置換された化合物です。これらは比較的安定しており、化学合成などで利用されます。

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参考文献

  • PubChem: Methanetetrol
  • S. Bohm, D. Antipova, J. Kuthan (1997) "A Study of Methanetetraol Dehydration to Carbonic Acid". International Journal of Quantum Chemistry, 62, 315–322.
  • Joshua H. Marks et al. (2025) "Methanetetrol and the final frontier in ortho acids". Nature Communication, 16(6468).
  • 彩恵りり (2025年8月28日). "合成困難な “スーパーアルコール” 「オルト炭酸」を初合成 宇宙の氷に含まれる?". Sorae.