物理化学および生物学における浸透圧の仕組みと働き

📌 主なポイント
- ✓浸透圧は希薄溶液において物質の種類に依存しない束一的性質の一つである。
- ✓ファントホッフの式(π = MRT)によってモル濃度や温度との関係が表される。
- ✓細胞膜は半透膜として働き、周囲の溶液の濃度(高張・低張・等張)によって細胞の形状や状態が変化する。
- ✓ヒトの体液の浸透圧は、主に腎臓におけるホルモン制御を通じた水やナトリウムイオンの再吸収によって調整されている。
浸透圧(しんとうあつ)とは、物理化学における重要な用語であり、半透膜を挟んで純溶媒と溶液、あるいは濃度の異なる2つの溶液が接しているときに生じる現象に関連する圧力である。
物理化学的な基本原理
半透膜とは、溶媒のような小さな分子のみを通し、溶質分子を通さない性質を持つ膜のことである。溶媒と溶質が同じで濃度の異なる2つの溶液が半透膜で隔てられている場合、拡散の原理により、低濃度溶液側から高濃度溶液側へと移動する溶媒分子の数が逆向きのものより多くなる。結果として、溶媒は溶質濃度の高い溶液の方へ移動する。このとき、溶液側に圧力を加えることで溶媒の移動(浸透)を阻止することができる。この阻止に必要な圧力が浸透圧である。

希薄溶液中における浸透圧 $\pi$ [atm] は、ファントホッフ(van't Hoff)の式によって次のように表される。
$\pi = MRT$
ここで、$M$ は容積モル濃度 [mol / dm³]、$R$ は気体定数 [atm · dm³ / K · mol]、$T$ は絶対温度 [K] である。この式は理想気体の状態方程式と同じ形をしており、浸透圧は物質の種類に依存しない希薄溶液の束一的性質の一種である。なお、電解質溶液の浸透圧を求める際には、ファントホッフの因子を用いて補正を行う必要がある。
生物における浸透圧の役割

生物の細胞膜は一種の半透膜として機能している。細胞内の溶液と比較して、浸透圧が高い溶液を高張液、低い溶液を低張液、等しい溶液を等張液と呼ぶ。ヒトの体液と浸透圧が等しい食塩水は生理食塩水と呼ばれ、その濃度は約0.9w/v%である。真水や水道水のように浸透圧が極端に低い水に赤血球などの細胞を入れると、外側から水分が流入して細胞が膨張・破壊される溶血が起こることが知られている。一方、植物細胞には細胞壁が存在するため、真水に入れた場合でも一部を除いて破裂することなく、細胞膜が細胞壁を内側から圧する膨圧が生じる。この膨圧は植物体を支えたり、気孔の開閉などの運動の原動力となっている。
ヒトの体液の浸透圧調整
ヒトの体内では、腎臓による水とナトリウムイオンの再吸収を通じて体液の浸透圧が一定に保たれている。血液の浸透圧が上昇した際には、脳下垂体後葉からバソプレッシン(抗利尿ホルモン)が分泌されて腎臓での水の再吸収が促進され、尿量が減少して血液中の水分が増加する。逆に浸透圧が低下した際には、副腎皮質から鉱質コルチコイドが分泌され、腎細管でのナトリウムイオンの再吸収が促されて浸透圧が調整される。
よくある質問
浸透圧とはどのような圧力ですか?
生理食塩水の濃度はどのくらいですか?
植物細胞が真水に入っても破裂しないのはなぜですか?
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参考文献
- 岩波理化学辞典・同生物学辞典等
- 磯直道, 上松敬禧, 真下清, 和井内徹 『基礎物理化学』 東京教学社, 1997年