鉄道技術
鉄道における架空電車線方式の概要と技術

鉄道の集電方式である架空電車線方式について、その構造、分類、および高速走行への対応技術を解説します。
📌 主なポイント
- ✓架空電車線方式は、車両上部の架線からパンタグラフを介して集電する方式である。
- ✓高速走行に対応するため、トロリ線の材質や吊架構造の改良(CS架線やPHC架線など)が進められている。
- ✓剛体架線式は、トンネル内など高さ制限がある区間で主に採用される。
架空電車線方式(かくうでんしゃせんほうしき)は、電気鉄道における主要な集電方式の一つです。車両が走行する空間の上部に架線(トロリ線)を張り、パンタグラフなどの集電装置を介して車両に電力を供給します。鉄道運行の現場では、河川などと区別するために「がせん」と呼称されることもあります。
構造と基本原理
架空電車線は、トロリ線、吊架線、ハンガー、ドロッパー、およびこれらを支持する電柱やビームなどで構成されます。直流電化区間では、変電所からの電力を供給するために饋電線(きでんせん)が併設され、一定間隔でトロリ線と接続されます。トロリ線は集電装置の摺板の摩耗を均一化するため、線路中心に対して左右に蛇行させて張る「偏位」が設けられています。
主な分類
架線方式は、吊架方法によっていくつかの種類に分類されます。
- 直接吊架式:吊架線を設けず、トロリ線のみを直接支持する方式。構造が簡素で安価ですが、高速走行には適さず、路面電車や閑散線区で用いられます。
- シンプルカテナリー式:トロリ線をハンガーで吊架線から吊るす最も一般的な方式。高速化に対応するため、CSトロリ線や析出強化型銅合金(PHC)トロリ線を用いた改良型が新幹線などで採用されています。
- コンパウンドカテナリー式:吊架線とトロリ線の間に補助吊架線を介在させる方式。高速走行時の離線が少なく、運転密度の高い路線や高速路線で採用されます。
- 饋電吊架式:吊架線を饋電線と兼用する方式。部品点数の削減が可能で、JR東日本の「インテグレート架線」などがこれに該当します。
- 剛体架線式:鋼材をトロリ線として使用する方式。トンネル内などスペースが限られた場所で用いられます。
高速走行への対応
鉄道の高速化に伴い、架線には高い波動伝播速度が求められます。新幹線などの高速区間では、トロリ線の材質に銅に鋼心を入れたCSトロリ線や、高硬度・高導電率を誇るPHCトロリ線が導入されています。また、集電装置の追随性を高めるため、自動張力調整装置を用いて架線の張力を一定に保つ工夫がなされています。
よくある質問
架空電車線方式と第三軌条方式の違いは何ですか?
架空電車線方式は車両上部の架線から集電するのに対し、第三軌条方式は線路脇に設置された給電用レールから集電します。
なぜトロリ線は蛇行して張られているのですか?
集電装置の摺板が一点のみで摩耗することを防ぎ、摩耗を均一化させるためです。
剛体架線式が地下鉄でよく使われる理由は?
剛体架線は断線しにくく、カテナリー式に比べてトンネル内の高さを低く抑えることができるためです。
関連記事
電気鉄道パンタグラフ第三軌条方式新幹線
参考文献
- 鉄道総合技術研究所「PHCシンプル架線」
- 鉄道総合技術研究所「最近実用化された新しい架線方式」
- JR東日本「仕事を高度化する取り組み02 インテグレート架線」
- 鉄道総合技術研究所「剛体電車線とカテナリ架線の移行構造」
- 鉄道総合技術研究所「160km/h超用剛体架線」