化学

二フッ化酸素の性質と化学特性

二フッ化酸素の性質と化学特性
二フッ化酸素(OF2)の物理的性質、化学反応性、合成方法、および安全上の取り扱いに関する詳細な百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 二フッ化酸素の化学式はOF2であり、常温では特異臭を持つ無色の気体である。
  • 酸素の酸化数が+2をとる数少ない化合物のひとつである。
  • 極めて強い酸化力を持ち、水や特定のハロゲン、水素などと激しく、あるいは爆発的に反応する。
  • ヒトや動物に対して非常に強い毒性を示し、NIOSH等によって厳しい曝露限度が定められている。

二フッ化酸素(にフッかさんそ、英: oxygen difluoride)は、化学式が OF2 で表される無機化合物であり、常温では特異な臭気を持つ無色の気体として存在する。凝縮すると淡黄色の液体となる。強力な酸化力を有し、強い毒性を示す物質である。

物理的性質と分子構造

二フッ化酸素の分子は折れ線形構造(点群 C2v)をしており、O–F間の結合距離は約140.9pm、∠FOFの結合角は約103.18°である。モル質量は53.9962 g/molである。

二フッ化酸素分子の構造と寸法
二フッ化酸素分子の構造と寸法
二フッ化酸素分子の空間充填モデル
二フッ化酸素分子の空間充填モデル

融点は−223.8°C、沸点は−144.75°Cである。密度については、液体状態において温度によって変化し、−224°Cで1.90 g/cm3、−183°Cで1.719 g/cm3、−145°Cで1.521 g/cm3となり、室温での気体密度は1.88 g/Lである。

酸化数と化学的特徴

酸素の電気陰性度が約3.5、フッ素の電気陰性度が約4.0であるため、二フッ化酸素における酸素の酸化数は+2となる。これは、酸素が+2の酸化数を持つ数少ない例の一つである。

二フッ化酸素は125°C程度まで安定であり、フッ化酸素の中では比較的安定な部類に入るが、その極めて強い酸化力に大きな特徴がある。塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)とは室温で爆発的に反応することがあり、水蒸気と混合した場合も室温で爆発する。また、放電下では水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)などと爆発的に反応する。

合成方法

二フッ化酸素は、水酸化ナトリウムの水溶液にフッ素を通じる方法や、フッ化水素カリウム(HF-KF)の水溶液を電解することによって得られる。また、湿ったフッ化カリウムの存在下でフッ素を反応させる方法でも生成することができる。

主な化学反応

アルカリ水溶液中では、二フッ化酸素はフッ化物イオンと酸素に分解する。

アルカリ水溶液中での分解反応の化学式
アルカリ水溶液中での分解反応の化学式

水とは穏やかに反応してフッ化水素を生成する。

水との反応を示す化学式
水との反応を示す化学式

金属や非金属を問わず酸化またはフッ素化する性質を持ち、他のハロゲン化物イオンやハロゲン化水素の水溶液に対しては、対応するハロゲンを遊離させる酸化作用を示す。

ハロゲン化水素との反応式
ハロゲン化水素との反応式

さらに、放電下ではキセノン(Xe)とも反応し、フッ化キセノン類および酸化フッ化キセノンを生じさせることが知られている。

安全性と毒性

二フッ化酸素は非常に有毒な気体であり、人体への吸入に対して厳重な注意が必要である。アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)などのデータによると、半数致死濃度(LC50)はラット(1時間)で2.6 ppm、マウス(1時間)で1.5 ppm、イヌ(1時間)で26 ppm、サル(1時間)で16 ppmとされている。許容濃度(PEL/REL)としては、時間加重平均(TWA)または天井値(C)として0.05 ppm(0.1 mg/m3)が設定されている。

NFPA 704による危険性表示ダイヤモンド
NFPA 704による危険性表示ダイヤモンド

よくある質問

二フッ化酸素の分子形状はどうなっていますか?
二フッ化酸素の分子は折れ線形構造をしており、O–F間の結合距離は約140.9pm、結合角は約103.18°です。
二フッ化酸素における酸素の酸化数はいくつですか?
酸素の酸化数は+2です。これは酸素が+2の酸化数を持つ数少ない化合物の例です。
二フッ化酸素はどのように合成されますか?
水酸化ナトリウム水溶液にフッ素を通じる方法や、HF-KF水溶液の電解、または湿ったフッ化カリウムの存在下でフッ素を反応させる方法によって得られます。

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参考文献

  • 漆山 秋雄、「フッ化酸素」、『世界大百科事典』、CD-ROM版、平凡社、1998年。
  • 長倉三郎 ら(編)、「フッ化酸素」、『岩波理化学辞典』、第5版 CD-ROM版、岩波書店、1999年。
  • アメリカ国立労働安全衛生研究所 (NIOSH) Pocket Guide to Chemical Hazards 0475.