自然科学

相 (物質科学)

相 (物質科学)
物理学および化学における「相(物質)」の定義や、固相・液相・気相などの物質の三態、相転移、相図について解説する専門事典記事。

📌 主なポイント

  • 相とは、化学的組成および物理的状態が一様な物質系の実体である。
  • 物質の三態である気相、液相、固相だけでなく、物質によっては複数の固相や液相が存在する。
  • 温度や圧力の変化によって、ある相から別の相へ移行する現象を相転移と呼ぶ。

熱力学および物理化学において、(そう、英: phase)とは、化学的組成および物理的状態が全体的に一様な物質系の実体を指す。化学組成や物理的状態が区別できる領域を分かつ境界を持ち、系の中で均質な領域として存在している。

融解する氷
融解する氷

物質の三態と相の概念

気体、液体、固体は物質の基本的な形態として知られており、それぞれ気相、液相、固相に対応する。しかし、単純な三態の区分だけではなく、同一の凝縮相(固体や液体)であっても異なる結晶構造や複数の形態をとる場合があるため、これらを厳密に区別・定義するための用語として「相」が用いられる。

例えば、完全に溶解した食塩水はどの部分を取り出しても組成および物性が一様であるため単一の相からなる。これに対し、水と氷が共存する系では、組成は同一の水分子であっても、固体と液体という異なる物理的状態を示すため、2つの相から構成されている。

多様な相の例

多くの純物質は温度や圧力の条件に応じて固体、液体、気体の状態変化を示すが、固体や液体においてはさらに多様な相が存在する。

  • 固相の多様性:硫黄の斜方硫黄と単斜硫黄、炭素のグラファイトやダイヤモンド、炭酸カルシウムの方解石とアラレ石など、同じ物質でも結晶構造が異なる複数の固相が存在する。氷においても、高圧下を含め複数の異なる結晶構造(相)が知られている。
  • 複雑な系の相:土壌は固相(土壌粒子)、液相(土壌水)、気相(土壌空気)の三相から構成されている。また、大気中に存在するエアロゾルは、清浄な空気中にも微小な水相や固相を分散させており、環境化学などの分野において重要な相の構成要素として扱われる。

相転移と相図

ある相の温度や圧力を変化させたとき、別の相へと状態が切り替わる現象を相転移と呼ぶ。例えば、1気圧の下で液体の水を冷却または加熱することにより、特定の温度(氷点や沸点)で相の共存状態を経ながら状態が変化する。

また、系内の状態変数(温度や圧力など)を指定した際に、熱力学的にどのような平衡状態でどの相が存在するかを視覚的に示した図を相図と呼ぶ。平衡状態にある系内の相の数と自由度の間には、相律と呼ばれる関係が成立する。

よくある質問

相とは何ですか?
相とは、化学的組成および物理的状態が全体的に一様な物質系の実体のことです。
氷水はいくつ相からなりますか?
氷水は、組成としては同じ水分子からなりますが、固体(氷)と液体(水)という異なる物理的状態を持つため、2つの相から構成されます。
相転移とは何ですか?
温度や圧力などの外部条件を変化させたとき、ある相から別の相へと状態が変化する現象のことです。

関連記事

化学物理学統計力学物性物理学

参考文献

IUPAC GOLD phase, http://goldbook.iupac.org/P04528.html Peter Atkins, Julio de Paula (2014), Atkins' Physical Chemistry (10 ed.), Oxford, p. 155. Gordon M. Barrow 著、大門寛, 堂色一成 訳『バーロー物理学(上)』(6版)東京化学同人、1999年、345頁。 松中照夫『土壌学の基礎』農山漁村文化協会、2013年、65頁。 Peter Atkins, Julio de Paula 著、千原秀昭, 稲葉章 訳『アトキンス物理化学要論』(4版)東京化学同人、2007年、58頁。