ホスフィン(リン化水素)の化学的性質と天文学的検出

📌 主なポイント
- ✓ホスフィン(PH3)は無色で腐魚臭を持つ劇物であり、強い毒性を示す。
- ✓半導体製造におけるドーピングガスの原料や、化合物半導体の合成に用いられる。
- ✓木星の大気中に存在することが確認されているほか、金星での検出を巡っては誤検出の可能性を指摘する反証研究が発表されている。
ホスフィン(英: phosphine)は、分子式が PH3 で表される、リンと水素による無機化合物である。別名としてリン化水素(りんかすいそ、英: hydrogen phosphide)や水素化リン(英: phosphorus hydride)とも呼ばれ、IUPAC組織名ではホスファン(英: phosphane)と称される。また、「ホスフィン」という名称は、PH3 を母化合物とする有機化合物群(一般式 R3P)の総称としても用いられる。

半導体産業においては、ドーピングガスの原料として利用される。ケイ素をn形にする工程や、インジウムガリウムリン(InGaP)などの化合物半導体を製造する際に欠かせない物質である。


物理的および化学的性質
常温・常圧において、ホスフィンは無色で腐魚臭を放つ可燃性の気体である。常温の空気中では酸素と反応して自然発火する性質を持つ。極めて強い毒性を有しており、日本の毒物及び劇物取締法では医薬用外毒物に指定されている。
- 化学式: PH3
- モル質量: 34.00 g/mol
- 融点: -134 ℃
- 沸点: -87.8 ℃
- 密度: 1.379 g/L(気体、25 ℃)
- 水への溶解度: 31.2 mg/100 mL(17 ℃)

分子形状は三角錐形であり、アンモニアと同様に塩基としての作用を示す。強酸性媒体中で水素イオンを受け取ることでホスホニウムイオン(


生成方法
ホスフィンを合成・生成する代表的な化学反応の一つとして、二リン化三カルシウムに水を加える手法が挙げられる。

この反応により、水酸化カルシウムとともにホスフィン気体が生成される。
惑星大気における存在と議論
ホスフィンは、地球の大気中にも微量に存在することが知られており、海洋における有機物の分解や生物学的・地球化学的プロセスを通じて生成されていると考えられている。
また、木星の乱気流を伴う大気中にも存在しており、これは惑星内部の高温環境で生成され、対流嵐によって上層へ運ばれたものとされている。一方、金星の大気中におけるホスフィンの検出については激しい科学的議論が交わされた。初期の観測報告では金星の雲のなかにホスフィンが存在する可能性が示唆され、未知の光化学反応や生物学的プロセスの存在を期待させるものとして注目を集めた。しかしその後の独立した再解析や反証研究により、統計的に有意な水準でのホスフィン検出は確認されず、誤検出であったとする見解が複数の研究グループから示されている。
よくある質問
ホスフィンとはどのような物質ですか?
ホスフィンはどのような用途で使われますか?
金星におけるホスフィンの検出はどう評価されていますか?
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参考文献
- Phosphine - National Library of Medicine (NLM)
- 大谷英雄ほか、「ホスフィンの爆発限界」、『安全工学』1988 年 27 巻 2 号 p. 96-98.
- Gassmann, G. et al. (1996). “Offshore atmospheric phosphine”. Naturwissenschaften 83 (3): 129–131.
- Greaves, J. S. et al. (2020). “Phosphine gas in the cloud decks of Venus”. Nature Astronomy.
- Snellen, I. A. G. et al. (2020). “Re-analysis of the 267-GHz ALMA observations of Venus: No statistically significant detection of phosphine”. arXiv:2010.09761.