美術史・建築史
ピクチャレスク:18世紀イギリスの風景美学と建築理念

18世紀イギリスで発展した審美理念「ピクチャレスク」について、その起源、美学的な位置づけ、建築や造園への影響を解説します。
📌 主なポイント
- ✓ピクチャレスクは18世紀後半のイギリスで発展した審美理念である。
- ✓ウィリアム・ギルピンの著作により、風景を「絵画のように」鑑賞する視点が普及した。
- ✓特定の建築様式を指すものではなく、不規則性や多様性を重んじる造園や建築の傾向を指す。
ピクチャレスク(英: Picturesque)は、18世紀後半のイギリスで提唱された審美上の理念であり、直訳すると「絵画のような」を意味します。この概念は、当時の風景に対する見方や建築、造園のあり方に大きな影響を与えました。
起源と美学的背景
ピクチャレスクの理念は、ウィリアム・ギルピンが1782年に発表した『主としてピクチャレスク美に関してワイ川および南ウェールズの幾つかの地形その他の1770年夏になされた観察』によって広く導入されました。この著作は、旅行者が風景を「ピクチャレスク美」の規則に基づいて鑑賞するための指針として機能しました。
当時の美学において、ピクチャレスクは「美」と「崇高」という二つの主要な概念の中間に位置づけられるものとして議論されました。エドマンド・バークが『美と崇高の理念の起源に関する哲学的考察』(1757年)で論じたように、調和のとれた「美」や、畏怖を抱かせる「崇高」に対し、ピクチャレスクは不規則性や荒々しさ、多様性の中に独特の魅力を認める感性として、ロマン主義的な潮流の一部を形成しました。
よくある質問
ピクチャレスクとはどういう意味ですか?
「絵画のような」を意味する言葉で、18世紀イギリスにおいて、風景や建築の中に不規則性や荒々しさ、多様性を見出し、それを美的な価値として評価する概念です。
ピクチャレスクは建築様式ですか?
特定の建築様式を指す言葉ではありません。自由な構成、不規則性、折衷主義などを特徴とする建築や造園の設計思想を指す用語として用いられます。
「美」や「崇高」とどう違いますか?
当時の美学では、調和的な「美」と畏怖を伴う「崇高」の対立軸に対し、その中間的な存在として、視覚的な面白さや変化に富んだ風景を愛でる「ピクチャレスク」が位置づけられました。
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参考文献
荒川裕子『もっと知りたいターナー: 生涯と作品』東京美術、2017年。Buzard, James. "The Grand Tour and after (1660-1840)", The Cambridge Companion to Travel Writing, 2001. Encyclopædia Britannica, "Picturesque".