農業施設

プラスチックハウスの概要と農業における役割

プラスチックハウスの概要と農業における役割
農業施設であるプラスチックハウス(ビニールハウス)の構造、歴史、被覆資材の変遷、および現代の農業における利用実態について解説します。

📌 主なポイント

  • プラスチックハウスは、被覆資材の多様化によりビニールハウスから名称が広義化されている。
  • 国内のプラスチックハウスの約78%は、基礎を用いない地中押し込み式パイプハウスである。
  • 江戸時代には既に油紙を用いた促成栽培が行われていた歴史がある。

プラスチックハウスとは、木材や鋼材を骨組みとし、合成樹脂のフィルムで外壁を被覆した農業施設です。一般的には「ビニールハウス」とも呼ばれますが、被覆資材の多様化に伴い、専門的には「プラスチックハウス」と総称されることが増えています。英語圏では総称してグリーンハウス(温室)と呼ばれます。

名称と被覆資材の変遷

普及初期にはポリ塩化ビニルフィルム(農ビ)が多用されたため「ビニールハウス」という呼称が定着しました。しかし、2014年時点の調査では、農ビの使用率は約43%に留まり、より軽量でべたつきにくいポリオレフィンフィルム(農PO)が約48%を占めるようになっています。機能性資材の開発も進んでおり、光の透過を制御するフィルムなども実用化されています。

ビニールハウスの外観
一般的なプラスチックハウスの外観

歴史的背景

日本における促成栽培の歴史は古く、江戸時代には油を浸した障子紙で覆い、炭火で加温する手法で冬に夏野菜を栽培する試みが行われていました。明治時代には海外から伝わったガラス温室の技術と融合し「ペーパーハウス」が登場しましたが、第二次世界大戦期には贅沢品として制限を受けました。現代の合成樹脂フィルムを用いたハウス栽培は、1951年頃からの試行を経て、1955年頃から本格的に実用化されました。

ビニールハウスの内部。イチゴ栽培の例
イチゴ栽培に利用されるプラスチックハウスの内部

構造と分類

構造部材により、以下のように分類されます。

  • 鉄骨ハウス:H型鋼や角形鋼を使用し、強度は高いが設置コストも高い。
  • 鉄骨補強パイプハウス:アーチパイプと鉄骨を組み合わせた構造。
  • 地中押し込み式パイプハウス:基礎を用いずパイプを地中に挿入する簡易的な構造で、国内シェアの約78%を占めます。
ビニールハウスの骨組み
パイプハウスの骨組み構造

設備と用途

温度管理のために暖房設備や換気ファン、遮光幕が設置されるほか、光合成を促進するための二酸化炭素導入や潅水設備が備わることが一般的です。栽培以外にも、作業小屋や格納庫、畜舎として利用されることもあります。税制上は、基礎を設けない簡易的な建造物であれば固定資産税の対象外となることが一般的です。

広大な土地を利用し多数建ち並ぶ北海道のビニールハウス(富良野市)
北海道富良野市における大規模なハウス群
福岡市西区西浦のビニールハウス
福岡県におけるプラスチックハウスの設置例
沖縄県立農業大学校(宜野座村)のプラスチックハウス
教育機関におけるプラスチックハウス
内部
ハウス内部の様子
いちご狩り用
観光農園でのいちご狩り用ハウス
干し柿の生産に使用する例
干し柿の加工に利用される例

よくある質問

ビニールハウスとプラスチックハウスの違いは何ですか?
基本的には同じ農業施設を指します。かつて被覆資材にポリ塩化ビニルフィルムが多用されていたことから「ビニールハウス」と呼ばれてきましたが、現在はポリオレフィンフィルムなど多様な合成樹脂が使われているため、総称として「プラスチックハウス」と呼ぶのが正確です。
ビニールハウスに固定資産税はかかりますか?
簡易な仮設小屋とみなされる場合は固定資産税の対象外です。ただし、基礎を設けて地面に固定したり、床をコンクリートで打設したりするなど、建物としての要件を満たす場合は課税対象となることがあります。
なぜ換気や暖房が必要なのですか?
ハウス内の温度を農作物の生育に適した範囲に保つためです。温度が上がりすぎる場合は換気窓やファンで排熱し、逆に温度が足りない場合は暖房設備で加温を行います。

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参考文献

  • 農林水産省「施設園芸の設置等の状況」(2018)
  • 日本施設園芸協会「施設園芸・植物工場ハンドブック」(2015)
  • 農業施設学会「よくわかる農業施設用語解説集」(2012)
  • 杉山大志「「江戸東京野菜」の企業家精神」(国際環境経済研究所)