脱工業化社会の概念と構造的変容
📌 主なポイント
- ✓脱工業化社会は、経済の重心が第二次産業から第三次産業へ移行した社会段階を指す。
- ✓ダニエル・ベルが1962年に提唱し、理論的知識が社会の中軸原則になると論じた。
- ✓ペティ=クラークの法則により、経済成長に伴う産業構造のシフトが説明される。
- ✓サービス経済化の進展は、雇用や財政政策における新たな課題を提起している。
脱工業化社会とは、工業化を経て発展した産業社会がさらに成熟し、経済活動の重心が製造業などの第二次産業から、情報・知識・サービスを扱う第三次産業へと移行した社会段階を指す。この概念は、社会学的歴史区分において伝統社会や産業社会に続く第三の区分として導入された。
理論的背景と主要な論者
この概念は、1962年にアメリカの社会学者ダニエル・ベルによって定式化された。ベルは、財の生産からサービス提供へと経済の重心が移る中で、理論的知識が社会の「中軸原則」となり、政策形成や改革の源泉になると指摘した。これにより、専門・技術職層である「知識階級」の役割が拡大し、組織運営においても合理性だけでなく社会的な要因を考慮する様式への変化が求められるようになった。
また、アルビン・トフラーは『第三の波』の中で、情報が物理的資源を代替し、官僚的な組織に代わって流動的な「アドホクラシー」や、消費者が生産に関与する「生産消費者」の登場を予見した。一方、アラン・トゥーレーヌは、テクノクラシーとそれから排除される人々との間の新たな社会紛争に焦点を当てた議論を展開した。
経済のサービス化と産業構造
脱工業化の進展は、しばしば「経済のサービス化」として捉えられる。これはペティ=クラークの法則に示される通り、経済成長に伴い労働人口や付加価値の比重が第一次産業から第二次産業、そして第三次産業へとシフトする現象である。製造業においても、高付加価値化を目指して企画や販売部門の比重が高まる「製造業のサービス化」や、サービス産業へのアウトソーシングが進展している。
しかし、サービス経済化には課題も存在する。トービン・アイヴァーセンらが指摘した「サービス経済のトリレンマ」によれば、生産性向上が緩やかなサービス産業の拡大は、所得平等、雇用拡大、均衡財政の3要素を同時に維持することを困難にする側面がある。
よくある質問
脱工業化社会とはどのような社会ですか?
ダニエル・ベルが提唱した「知識階級」とは何ですか?
サービス経済のトリレンマとは何ですか?
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参考文献
- ダニエル・ベル『脱工業社会の到来-社会予測の一つの試み』ダイヤモンド社、1975年。
- 駄田井正, 浅見良露, 鶴田善彦(編)『地域経済の視点―筑後川流域圏の経済社会と住民生活』九州大学出版会、1999年。
- 新川敏光他『比較政治経済学』有斐閣、2004年。