天文学
潜在的に危険な小惑星(PHA)の概要と定義

地球に接近し、衝突時に大きな影響を与える可能性がある「潜在的に危険な小惑星(PHA)」の定義、観測、およびリスク評価について解説します。
📌 主なポイント
- ✓PHAの定義には、地球との最小交差距離(EMoid)が0.05AU以下、絶対等級が22.0未満という基準が用いられる。
- ✓絶対等級22.0は、直径約110〜150メートル以上の天体に相当する。
- ✓PHAの衝突リスクは、軌道計算の精度やヤルコフスキー効果などの物理的要因によって変動する。
- ✓PHAは地球に近い軌道を持つため、小惑星探査機のターゲットとして選定されることが多い。
潜在的に危険な小惑星(Potentially Hazardous Asteroid、略称:PHA)とは、地球近傍小惑星のうち、地球軌道への接近距離が極めて近く、かつ衝突した際に地球環境へ重大な影響を及ぼす可能性があると推定される天体の分類です。
定義
PHAの分類には、以下の2つの条件が用いられます。
- 地球軌道との最小交差距離(EMoid):0.05AU(約748万km)以下であること。
- 絶対等級:22.0未満であること。
絶対等級が22.0の天体は、アルベド(反射能)を考慮すると直径約110メートルから150メートル以上に相当します。この規模の天体が地球に衝突した場合、津波や局地的な破壊など、地球環境に対して無視できない影響を与える可能性があると考えられています。なお、PHAは小惑星を対象とした分類であり、彗星は含まれませんが、彗星・小惑星遷移天体は含まれる場合があります。
観測とリスク評価
PHAの衝突リスクは、軌道要素の確定度合いによって変動します。地球への接近は精密な観測の機会となりますが、地球の重力による軌道の変化や、小惑星の形状・自転・熱放射に起因する「ヤルコフスキー効果」などが予測を困難にする要因となります。
過去には、アポフィス((99942) Apophis)のように、将来の衝突確率が注目され、トリノスケールで高い評価を受けた事例も存在します。一方で、観測技術の向上により、かつて衝突リスクが高いとされた天体が、詳細な軌道計算によってリスクが排除されるケースも少なくありません。
探査の対象
PHAは地球軌道に近い軌道を持つため、探査機による観測やサンプルリターン計画の対象として選定されることが多くあります。日本のはやぶさ計画における「イトカワ」や、はやぶさ2の「リュウグウ」などは、その代表的な例です。
よくある質問
PHAと地球近傍天体(NEO)の違いは何ですか?
地球近傍天体(NEO)は地球に接近する軌道を持つ天体全般を指す広義の分類ですが、PHAはその中でも特に地球への接近距離が近く、衝突時に重大な被害をもたらす可能性がある天体に限定した分類です。
すべてのPHAが将来地球に衝突するのですか?
いいえ、そうではありません。PHAはあくまで「衝突の可能性がある」という基準で分類された天体群であり、直ちに衝突が確定しているわけではありません。多くの天体は将来的に地球から離れた軌道を通ることが判明しています。
PHAの直径はどのように測定されますか?
絶対等級とアルベド(反射能)から計算されます。アルベドが不明な場合は、一般的に0.13と仮定して直径が算出されます。
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参考文献
- Center for NEO Studies (CNEOS), NASA.
- Minor Planet Center, "List Of The Potentially Hazardous Asteroids (PHAs)".
- JPL Small-Body Database Browser.