物理学

ポインティング・ベクトル:電磁場のエネルギー流束

ポインティング・ベクトル:電磁場のエネルギー流束
ポインティング・ベクトルは、電磁場におけるエネルギーの流れの密度と方向を示す物理量です。定義、エネルギー保存則との関連、物理的解釈を解説します。

📌 主なポイント

  • ✓ポインティング・ベクトルは電磁場のエネルギー流束密度を表す。
  • ✓定義式は S = E × H であり、電場と磁場の外積である。
  • ✓電磁場のエネルギー保存則(ポインティングの定理)において重要な役割を果たす。

ポインティング・ベクトル(英: Poynting vector)は、電磁場におけるエネルギーの流れの密度と方向を表すベクトル量です。イギリスの物理学者ジョン・ヘンリー・ポインティングにちなんで命名されました。電磁波においては、このベクトルは波の進行方向とエネルギーの伝播方向を示します。

定義

ポインティング・ベクトル S は、電場の強度 E と磁場の強度 H の外積として定義されます。

S = E × H
ポインティング・ベクトルの定義式

真空中の場合、磁束密度 B と真空の透磁率 μ0 を用いて以下のように表すことも可能です。

S = (1/μ0) <em> E × B
真空中のポインティング・ベクトル

媒質中では、その媒質の透磁率 μ を用いて計算されます。

μ = μs </em> μ0
媒質の透磁率

エネルギー保存則

電磁場のエネルギー保存則は、ポインティング・ベクトルの発散を用いて記述されます。電磁場のエネルギー密度 u を用いた連続の方程式は以下の通りです。

∇・S = -H・(∂B/∂t) - E・(∂D/∂t) - E・j
ポインティング・ベクトルの発散
u = 1/2 <em> (E・D + H・B)
電磁場のエネルギー密度
∇・S + ∂u/∂t = -E・j
電磁場のエネルギー保存則

この式において、右辺の E・j は、電磁場が電荷に対して行う仕事率(単位体積あたりの電力)を意味します。

時間平均と放射束密度

電磁波のように場が振動する場合、ポインティング・ベクトルの強度は時間とともに変動します。そのため、実用上は時間平均をとった値が用いられ、これを放射束密度と呼びます。

I = ⟨S⟩T = (1/2T) </em> ∫S dt
放射束密度の時間平均

また、空間全体で積分した値は、電磁場が持つ運動量と関連付けられます。

∫V S dV
ポインティング・ベクトルの空間積分

よくある質問

ポインティング・ベクトルは何を意味しますか?
電磁場における単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流れ(エネルギー流束)の密度と方向を表します。
ポインティング・ベクトルは常に波の進行方向を指しますか?
真空中や等方性媒質では進行方向を指しますが、異方性媒質では必ずしも一致しません。
放射束密度とは何ですか?
ポインティング・ベクトルの時間平均値であり、電磁波のエネルギー輸送量を表す指標です。

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参考文献

  • John Henry Poynting, "On the Transfer of Energy in the Electromagnetic Field", Philosophical Transactions of the Royal Society of London, 1884.
  • 砂川重信『理論電磁気学』岩波書店.