圧力勾配の基礎と気象学における役割

📌 主なポイント
- ✓圧力勾配とは、任意の2地点間における圧力の変化率・変化量のことである。
- ✓気象学においては鉛直および水平方向の気圧の変化率を指し、気圧勾配や傾圧とも呼ばれる。
- ✓対流圏内では高度が上がるにつれて、約9 Pa/mの割合で気圧が小さくなっていく。
- ✓天気図上の等圧線の間隔が狭いほど、水平方向の気圧勾配が大きいことを意味する。
圧力勾配(あつりょくこうばい、英: pressure gradient)とは、任意の2地点間における、圧力の変化率および変化量を指す概念である。
気象学の分野においては、鉛直方向および水平方向に離れた2地点間での気圧の変化率や変化量を意味し、気圧勾配、傾圧度、傾圧とも呼ばれる。なお、鉛直方向の気圧勾配は特に気圧減率と称される。
単位と数学的表現
一般的に、1キロメートルあたりの圧力の変化量を基準として、パスカル毎キロメートル(Pa/km)で表現されるほか、Pa/mやhPa/kmなども用いられる。
空間内の圧力が $P = P(x, y, z)$($x, y, z$ はそれぞれ縦・横・鉛直方向に対応)として表されるとき、圧力勾配はベクトルとして定義される。

簡略的な表現として、気圧が $a$ であるA地点と、そこから距離 $n$ 離れた気圧 $b$ であるB地点の間における圧力勾配 $P_g$ は次式で表される。

例えば、気圧1004 hPaのA地点と、そこから300 km離れた気圧1010 hPaのB地点との間の気圧勾配は0.02 hPa/kmとなる。BからAへの気圧勾配を求める場合は、この式の符号を反転させる。
気象・気候における圧力勾配
地球上における圧力勾配は、主に鉛直方向と水平方向に存在する。対流圏内においては、高度が上がるごとに約9 Pa/m(90 hPa/km)の割合で気圧が低下していく。
一方、水平方向にも遥かに緩やかながら圧力勾配が存在する。これは日射量や比熱の違いなどに起因する大規模な温度勾配が大気の温度差を生み、最終的に気圧の差へとつながるためである。
気圧傾度力と風の関係
気圧勾配は、気象学における気圧傾度力、すなわち風を発生させる原動力となる。
ただし、気圧勾配の非常に大きい鉛直方向の風よりも、気圧勾配の小さな水平方向の風の方が強く感じられる。これは、鉛直方向の気圧勾配が大気の密度成層によって成り立つ標準状態にあるためである。気圧が標準状態から上下した(擾乱が生じた)部分が元の状態に戻ろうとする働きによって風が吹くため、元々標準状態にある鉛直方向においては、その勾配の大きさに比べて相対的に弱い風しか発生しない。
天気図での表現
天気図上においては、等圧線の間隔を見ることで水平方向の気圧勾配を容易に把握することができる。等圧線の間隔が狭いほど、気圧勾配が大きいことを示している。
その他の現象
音波や衝撃波は、小規模ながら非常に大きな気圧勾配を伴う波の一種であると言える。また、動物の感覚器である耳や皮膚は、周囲の微細な圧力勾配を感じ取る器官として機能している。
よくある質問
圧力勾配の単位にはどのようなものがありますか?
気圧傾度力とは何ですか?
なぜ鉛直方向の気圧勾配は大きいのに強い風が吹かないのですか?
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参考文献
- Edward N. Lorenz (1967) The nature and theory of the general circulation of atmosphere, World Meteorological Organization, Publication No. 218, Geneva, Switzerland.
- Robert G. Fleagle and Joost A. Businger (1980) An Introduction to Atmospheric Physics, Second Edition, Academic Press, International Geophysics Series, Volume 25, ISBN 0-12-260355-9.
- John M. Wallace and Peter V. Hobbs (2006) Atmospheric Science: An Introductory Survey, Second Edition, Academic Press, International Geophysics Series, ISBN 0-12-732951-X.