記号

プライム記号(′)の定義と用法

プライム記号(′)の定義と用法
数学、物理学、単位表記などで使用される記号「プライム(′)」の歴史、呼称、および各分野における具体的な用法について解説します。

📌 主なポイント

  • プライム記号(′)は、数学、物理学、単位表記などで類似の対象や細分化を示すために使用される。
  • 「ダッシュ」という読み方は、英国の伝統的な用法に由来し、日本でも広く定着している。
  • 数学の導関数表記(ラグランジュの記法)や、角度・時間の「分・秒」の表記に用いられる。
  • 素数(prime number)とは名称が似ているが、全く別の概念である。

プライム記号(′)は、文字や数字の右肩に添えて使用される記号です。数学、物理学、単位表記など幅広い分野で、元の対象と区別される類似の対象や、単位の細分化を示すために用いられます。この記号は「ダッシュ」や「分(ミニュート)」とも呼ばれます。

歴史的背景

プライム記号の起源は古く、ギリシア時代にまで遡ります。当時は分数を表示する記号の一つとして使用されていました。また、単位量を1/60ずつ分割する記号としても定着しました。17世紀の数学書『Clavis Mathematicae』(1667年)には、単位を次々に1/60へ分割する記号として「′」「″」「‴」が記載されています。19世紀のフランスでは、射影点や微分記号として解析学の分野で広く用いられるようになりました。

呼称の変遷

この記号の読み方は、地域や時代によって異なります。ラテン語の「pars minuta prima(第一の小部分)」が「minute(分)」の語源となり、これがプライム記号の起源とされています。ラグランジュは導関数を表す際に「fonction prime(1階導関数)」と呼び、これが現在の「プライム」という読み方の定着に寄与しました。一方で、英国の影響を受けた地域では「ダッシュ」と呼ぶ慣習があり、日本でも明治初期の技術教育を通じて「ダッシュ」という呼称が広く普及しました。

主な用途

数学および物理学

数学では、ある変数と類似しているが異なるものを区別するために使用されます(例:xとx′)。また、ラグランジュの記法として、導関数を表す際にも用いられます(f′(x)は1階導関数、f″(x)は2階導関数)。物理学では、事象の前後での変数の変化や、異なる慣性系間での座標の対応を示すために使用されます。

単位表記

平面角や時間の単位として、度(°)の下位単位である「分(′)」や「秒(″)」を表すために使用されます。また、ヤード・ポンド法においてフィート(′)やインチ(″)を表す記号としても定着しています。

その他

化学や分子生物学では、環状構造の位置番号を区別するために用いられます(例:ヌクレオシドの5'位、3'位)。また、音楽の音名表記や言語学における翻字、さらには評定の段階付けなど、多岐にわたる分野で活用されています。

よくある質問

プライム記号とアポストロフィーの違いは何ですか?
プライム記号(′)は主に数学や科学の表記に用いられる記号であり、アポストロフィー(')は言語学的な用途(省略や所有格など)に用いられる記号です。電子的な印刷技術ではそれぞれ異なるコードが割り当てられています。
なぜ「ダッシュ」と呼ばれるのですか?
英国の伝統的な使用方法において、記号「′」が「dash」と呼ばれていたことに由来します。明治初期の日本における技術教育が英国風に行われたため、日本でも「ダッシュ」という読み方が定着しました。
素数(prime number)と関係がありますか?
いいえ、関係ありません。数学記号としての「プライム」は「第一の小部分」を意味するラテン語に由来しますが、素数を指す「prime」は「最初の」「主要な」を意味するラテン語に由来しており、語源も意味も異なります。

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数学記号導関数単位アポストロフィー

参考文献

  • 『標準 校正必携 第七版』日本エディタースクール、1999年。
  • F. Cajori, "A History of Mathematical Notations", Dover, 1993.
  • 柳河春三『洋算用法』大和屋喜兵衛、1857年。
  • 田野村忠温「ダッシュ,プライム」『数学セミナー』2018年8月号、日本評論社。