工業・技術
パルプ(製紙原料)の概要と製造プロセス

製紙の主要原料であるパルプの定義、木材および非木材パルプの分類、製造方法、および歴史的背景について解説します。
📌 主なポイント
- ✓パルプは主に植物のセルロース繊維から構成される製紙の主要原料である。
- ✓製造方法は大きく分けて、物理的に破砕する機械パルプと、薬品で分解する化学パルプがある。
- ✓非木材パルプの原料には、バガス、ヨシ、小麦わらなどが含まれる。
- ✓製紙工場では、パルプ製造の副産物である黒液を回収ボイラーで燃焼させ、エネルギーとして再利用している。
パルプ(英: pulp)とは、主に紙や板紙を製造するために植物から抽出・分離された繊維の集合体です。製紙工程において、植物細胞壁の主成分であるセルロース繊維を水中で絡み合わせることで紙が形成されます。現代の製紙産業では木材が主要な原料ですが、水素結合を形成できる植物繊維であれば、草、藁、竹、バガス(サトウキビの搾りかす)などからも抽出が可能です。

パルプの分類
パルプは原料や製造方法によって大きく分類されます。
木材パルプ
木材の幹から樹皮を除去し、チップ状に破砕したものを原料とします。計画的に植林された樹木を利用する比率が高まっています。
非木材パルプ
木材以外の植物を原料とするパルプです。繊維が長く、独特の風合いを持つため、和紙や特殊紙に利用されます。代表的な原料には、バガス、ヨシ、小麦わらなどがあります。
古紙パルプ
回収された古紙を水中で離解し、インクや異物を取り除いたものです。脱墨処理を施したものはDIP(De-Inked Pulp)と呼ばれます。

製造方法
パルプの製法は、大きく機械的処理と化学的処理に分けられます。
- 機械パルプ(MP):物理的に木材を破砕する方法です。収率は高いものの、リグニンが残留するため変色しやすく、繊維が剛直なのが特徴です。
- 化学パルプ(CP):薬品を用いてリグニンを分解・除去(蒸解)する方法です。純度の高いセルロースが得られるため、しなやかで強度の高い紙になります。現在、日本のバージンパルプ生産では、クラフトパルプ(KP)が主流です。
歴史的背景と供給
18世紀、スズメバチの巣の構造から着想を得て木材パルプの利用が研究され、19世紀半ばに砕木機が開発されたことで大量生産が可能となりました。日本では明治時代から生産が始まり、第一次世界大戦期には樺太での生産が重要な役割を果たしました。戦後はアラスカなど海外の森林資源を活用した供給体制が構築されました。
その他の用途
パルプの用途は紙の製造にとどまりません。近年では、製紙工程で発生する余剰パルプを活用し、ウシなどの家畜用飼料として利用する取り組みも行われています。
よくある質問
木材パルプと非木材パルプの違いは何ですか?
木材パルプは木材を原料とし、大規模な工業生産に適しています。一方、非木材パルプはバガスやヨシなどの植物を原料とし、繊維の特性を活かした和紙や特殊紙に用いられることが多いですが、集荷の効率性から木材パルプより高価になる傾向があります。
古紙パルプとは何ですか?
一度使用された紙を回収し、水中で繊維をほぐしてインクや異物を取り除いたパルプのことです。特にインクを除去したものはDIP(脱墨パルプ)と呼ばれます。
パルプの取引単位にはどのようなものがありますか?
水分含有量を考慮するため、パルプ繊維を88〜90%含む「風乾(ADMT)」や、繊維が100%の「絶乾(BDMT)」という単位が用いられます。
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参考文献
- JRS(レッテンマイヤージャパン株式会社)「小麦わらパルプ」
- Panoco バガスパルプ事業部
- 五條製紙株式会社「サトウキビからバガスパルプができるまで」
- 株式会社オギノ「ヨシとは」
- 樺太林業史編集会『樺太林業史』農林出版株式会社、1960年。
- 読売新聞「森の恵み生かし、牛を元気『モリモリ』にする製紙工場…余ったパルプで飼料生産」(2023年12月14日)