物理学

クォーク・グルーオン・プラズマの基礎と理論

クォーク・グルーオン・プラズマの基礎と理論
高温高密度状態において存在すると予想されるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の基礎理論や歴史的背景、高エネルギー重イオン衝突実験について解説します。

📌 主なポイント

  • クォークグルーオンプラズマ(QGP)は、高温・高密度状態で存在すると予想されるクォークとグルーオンのプラズマ状態である。
  • 1975年にジョン・C・コリンズとマルコム・ジョン・ペリー、およびニコラ・カビボとジョルジョ・パリシによってそれぞれ高密度・高温状態でのクォーク解放が予言された。
  • ビッグバン後の初期宇宙や中性子星の内部で実現していると考えられており、高エネルギー重イオン衝突実験により地上での再現が試みられている。

クォークグルーオンプラズマ(英: Quark-Gluon Plasma, QGP)とは、極端な高温・高密度状態において存在すると予想されている、クォークおよびグルーオンからなる物質の相である。通常の状態では、クォークはハドロンの中に強く閉じ込められており、単体で取り出すことはできない。しかし、量子色力学(QCD)の理論によれば、一定の閾値を超える高温あるいは高密度環境下では、多体効果によってクォークがハドロンの束縛から解放されると考えられている。

歴史的背景と理論的予言

高密度状態におけるハドロンからのクォークの解放(漸近的自由性に関連する現象)は、1975年にジョン・C・コリンズ(John C. Collins)とマルコム・ジョン・ペリー(Malcolm John Perry)によって予言された。同年、ニコラ・カビボ(Nicola Cabibbo)とジョルジョ・パリシ(Giorgio Parisi)によって、高温状態におけるクォークの解放についても同様に予言がなされた。

ハドロンガスの圧力を表す数式
ハドロンガスの圧力(PH)を表す数式モデル

低温・低密度状態におけるハドロンガスと、高温・高密度状態におけるQGPの状態方程式は、統計力学や自由度の数を用いて理論的に記述される。例えば、質量ゼロのパイ中間子からなる有限温度のハドロンガスについて、圧力やエネルギー密度、エントロピー密度は自由度を表すパラメータを用いて計算される。

ハドロンガスのエネルギー密度を表す数式
ハドロンガスのエネルギー密度(εH)を表す数式
ハドロンガスのエントロピー密度を表す数式
ハドロンガスのエントロピー密度(sH)を表す数式
南部=ゴールドストンボソンの自由度を表す数式
南部=ゴールドストンボソンの自由度(dπ)を表す数式

一方、QGP相における圧力やエネルギー密度は、クォークやグルーオンの自由度およびバッグ模型に基づくバッグ定数Bを用いて表現される。

QGPの圧力を表す数式
QGPの圧力(PQGP)を表す数式
QGPのエネルギー密度を表す数式
QGPのエネルギー密度(εQGP)を表す数式

宇宙論的意義と高エネルギー重イオン衝突実験

クォークグルーオンプラズマは、ビッグバン直後の初期宇宙において存在していたと考えられており、また中性子星の内部などの極限環境でも実現している可能性がある。これを実験室で再現するため、1980年代以降、世界各地の加速器施設において高エネルギー重イオン衝突実験が行われてきた。主な施設としては、米国のローレンス・バークレー国立研究所(LBL)のベバトロン、独GSIの重イオン・シンクロトロン、米ブルックヘブン国立研究所(BNL)のAGSや相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)、欧州原子核研究機構(CERN)のSPSおよび大型ハドロン衝突型加速器(LHC)などが挙げられる。

BNLのRHICにおける実験では、生成された物質が非常に粘性の低い「完全流体」としての性質を示すことが示唆されており、QGPが強く相互作用し合う強相関プラズマとして振る舞うことが研究されている。

よくある質問

クォークグルーオンプラズマとは何ですか?
高温および高密度な環境下で、クォークがハドロンの束縛から解放され、自由に運動できるようになったガス状のプラズマ状態を指します。
クォークグルーオンプラズマはどこで存在すると考えられていますか?
ビッグバン直後の初期宇宙や、中性子星の内部などの極限的な高密度・高温環境で存在すると考えられています。
どのような実験施設で研究されていますか?
米国のブルックヘブン国立研究所(RHIC)や、欧州原子核研究機構(CERNのLHC)などの大型加速器を用いた重イオン衝突実験で研究が行われています。

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参考文献

  • Collins, John C.; Perry, Malcolm John (1975). "Superdense Matter: Neutrons Or Asymptotically Free Quarks?". Physical Review Letters 34 (21): 1353–1356.
  • Cabibbo, Nicola; Parisi, Giorgio (1975). "Exponential Hadronic Spectrum and Quark Liberation". Phys. Lett. B 59 (1): 67-69.
  • Brookhaven National Laboratory (2005). "RHIC Scientists Serve Up 'Perfect' Liquid".