準結晶:非周期的な原子配列を持つ固体物質

📌 主なポイント
- ✓準結晶は並進対称性を持たないが、高い秩序性を持つ固体状態である。
- ✓1984年にダニエル・シェヒトマンによって発見され、2011年にノーベル化学賞が授与された。
- ✓結晶学的に禁止されていた5回、8回、10回、12回回転対称性を示す。
- ✓金属でありながら非常に高い電気抵抗を示すという特異な性質を持つ。
準結晶(じゅんけっしょう、英: quasicrystal)は、従来の結晶学における「結晶」の定義には当てはまらない、独自の原子配列を持つ固体物質の状態を指します。結晶が持つ並進対称性(周期性)を欠きながらも、電子線回折において鋭い回折スポットを示すなど、アモルファス(非晶質)とは明確に区別される高い秩序性を備えています。
発見の歴史
準結晶は、1984年にダニエル・シェヒトマンによってアルミニウム・マンガン合金(Al-Mn合金)の急冷試料から発見されました。それまでの結晶学では、回折像において5回や10回といった回転対称性は不可能であると考えられていたため、この発見は固体物理学の常識を覆すものでした。シェヒトマンはこの功績により、2011年にノーベル化学賞を受賞しました。初期の準結晶は熱力学的に不安定なものが多かったものの、その後、東北大学の蔡安邦らによってAl-Cu-FeやAl-Ni-Coなど、熱的に安定な準結晶が次々と発見されました。

構造的特徴
準結晶の構造は、数学的な「ペンローズ・パターン」の概念を用いて説明されます。これは、周期性を持たずに平面や空間を埋め尽くす非周期的なタイル張り構造であり、高次元空間の結晶構造を低次元空間に射影することで数学的に導出可能です。準結晶の回折像には、結晶に見られる1、2、3、4、6回対称に加え、5、8、10、12回といった結晶学的に禁止されていた回転対称性が現れます。
代表的な相として、正20面体対称性を持つIcosahedral相(I相)や、2次元ペンローズパターンが積層したDecagonal相(D相)が知られています。I相の内部には、Mackay型、Bergmann型、Tsai型といった特徴的な局所原子クラスターが存在し、これが準結晶の安定性を支えています。

物理的性質
準結晶は、金属でありながら金属らしくない特異な物性を示します。最も顕著なのはその高い電気抵抗であり、構成元素であるアルミニウムや銅、鉄が良導体であるにもかかわらず、準結晶状態では電気抵抗が大幅に増大します。これは、フェルミ面付近に擬ギャップと呼ばれる状態密度の落ち込みが存在するためと考えられています。また、機械的特性においても、非周期的な構造ゆえにへき開面を形成しにくく、硬くて強靭であるという特徴があります。
よくある質問
準結晶と結晶の最大の違いは何ですか?
なぜ準結晶は電気抵抗が高いのですか?
準結晶はどのようにして発見されましたか?
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参考文献
- Shechtman, D., Blech, I., Gratias, D., & Cahn, J. W. (1984). Metallic Phase with Long-Range Orientational Order and No Translational Symmetry. Physical Review Letters.
- 蔡安邦. (1990). 安定な準結晶の発見. 日本金属学会会報.