ラムエア・タービン:航空機の非常用風力原動機の仕組みと用途

📌 主なポイント
- ✓ラムエア・タービン(RAT)は、飛行中の空気流(飛行風)を動力源とする風力原動機である。
- ✓主エンジンと補助動力装置(APU)の両方が停止した際の非常用として、油圧や電力を確保するために展開される。
- ✓大型旅客機用のRATは出力が5〜70キロワット程度であり、軍用機や一部の兵器(M734信管など)でも利用される。
ラムエア・タービン(ram-air turbine, RAT)とは、航空機に補助動力装置として装備される風力原動機である。
最も多い用途は非常用であり、一次動力源である主エンジンおよび補助動力装置(APU)の両方が機能しなくなった際に、操縦のための最低限必要な動力(操縦系統、関連する油圧系統)および電力(計器類等)を得るために使用される。小型のタービン(風車)を機外に展開し、油圧ポンプもしくは発電機を駆動するように装備されている。メーカーによってはエア・ドリブン・ジェネレータ(air driven generator, ADG)とも呼ばれる。
概要
現代の航空機においては、電力や油圧といった動力の発生源は主エンジンおよびAPUであるが、これらはいずれも燃料を必要とする。一方、RATは飛行中の機体外側の空気流(飛行風)を動力源としている。通常時は胴体または翼の中に格納されており、非常時にはフタが開いて展開される仕組みとなっている。

種類と出力
動力を失うことが想定内である軍用機では、RATが広く装備されている。また、1960年代のビッカース VC-10 以降、ほとんどの旅客機もRATを保有しているが、小型民間機での装着例は限られている。機体の規模によって大きさや出力は異なり、一般的には直径80センチメートル程度のものが多いが、エアバスA380ではプロペラ径1.63メートルに及ぶ大型のものが装着されている。大型旅客機用RATの出力は概ね5から70キロワット程度である。プロペラは2枚または4枚のものが一般的であるが、軍用では多葉式ブレードを持つダクテッドタイプも普及しており、旅客機用の採用例も増加している。

その他の用途
非常用電源以外にも、軍用機においてはM61A1型ガトリング砲のモーター駆動動力用や、電波妨害用システムAN/ALQ-99の電源用として、ガンポッド収納タイプのRATが装着される例があり、これらは飛行中常時回転している。また、航空機以外でも、迫撃砲弾のM734信管において、内蔵電子回路の電源としてシロッコファン型のラムエア・タービンが備えられている。

主な事例
民間旅客機における非常用システムの重要性を示す事例として、エア・トランザット236便滑空事故やエア・カナダ143便不時着事故などが挙げられ、いずれもエンジンの停止後にラムエア・タービンが展開され、機体の制御に必要な電力を供給したことで知られている。