物理学・熱力学

実在気体の熱力学的性質と状態方程式

実在気体の熱力学的性質と状態方程式
分子間力や分子の有限の体積を考慮する実在気体の熱力学的性質、理想気体との違い、および状態方程式について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • 実在気体は、分子間力および分子自身の有限の体積を考慮する必要がある実際の気体である。
  • 低温や高圧の条件において、理想気体の状態方程式からの乖離が大きくなる。
  • 圧縮率因子を用いて理想気体からの偏差を評価することができる。

実在気体(じつざいきたい、英: real gas)とは、実際に自然界に存在する気体の総称であり、気体分子自身の体積や、分子同士の間に働く相互作用(分子間力)を無視できない状態にある気体を指す。これに対し、分子の大きさがゼロであり分子間力が全く働かないと仮定した理想的なモデルは理想気体と呼ばれる。

理想気体との違い

低温高圧の条件下において、気体分子同士の距離が近接するため、理想気体の状態方程式PV = nRT)からの乖離が顕著になる。実在気体では主に以下の2点が理想気体と異なる特性を生み出す原因となる。

  • 分子の体積: 気体分子自体が占める有限の体積が存在するため、容器内で分子が自由に動き回る実効的な体積は理想気体よりも小さくなる。
  • 分子間力: 分子間に働く引力や斥力により、壁面への衝突頻度や衝突時の運動量が変化し、結果として生じる圧力が理想気体の予測値から変動する。

状態方程式と補正

実在気体の振る舞いを記述するためには、理想気体の状態方程式を拡張・修正した方程式が用いられる。代表的なものとして、ファン・デル・ワールスが提唱したファン・デル・ワールスの状態方程式がある。

また、気体の挙動をより厳密に評価するために圧縮率因子Z = PV / nRT)が導入される。理想気体であれば常にZ = 1であるが、実在気体では温度や圧力によってZの値が1から大きく上下する。

関連する物理量

実在気体の熱力学的特性を定量的に議論する際には、比熱容量、等温圧縮率、および体積膨張率などが重要な物性値として扱われる。

よくある質問

実在気体と理想気体の最大の違いは何ですか?
分子自身の体積と、分子間に働く相互作用(分子間力)を無視できると仮定するかどうかが最大の違いです。
どのような条件下で実在気体は理想気体に近づきますか?
高温度かつ低圧力の希薄な条件において、分子間距離が十分に広がるため、実在気体は理想気体に近い振る舞いを示します。
実在気体の状態方程式にはどのようなものがありますか?
代表的なものとしてファン・デル・ワールスの状態方程式があり、分子の体積と分子間力を補正項として導入しています。

関連記事

理想気体熱力学状態方程式ファン・デル・ワールスの状態方程式統計力学

参考文献

文部省 著、日本物理学会 編『学術用語集 物理学編』培風館、1990年。ISBN 4-563-02195-4。山本恒雄『化学工学』(3版)槇書店、11頁。ISBN 4-8375-0690-9。