陸閘(りっこう)の構造、防災上の役割と歴史的変遷

📌 主なポイント
- ✓陸閘は、通常時は通路として開口し、増水や災害時には閉鎖して堤防の役割を果たす施設である。
- ✓柱の溝に木板や角材を落とし込んで水をせき止める方式は「角落とし」と呼ばれる。
- ✓東日本大震災の教訓を受け、現在では遠隔操作の自動化や、危険を伴う場合の閉鎖作業の見直し(常時閉鎖など)が進められている。
陸閘(りっこう、りくこう)とは、河川などの堤防において、通常時は日常生活や交通のために通行できるよう途切れさせておき、増水時や災害時にはゲート等でその開口部を塞ぐことにより、暫定的に堤防としての役割を果たさせるために設置された土木施設である。

構造と主な方式
陸閘には、扉を人力や動力によって開閉する方式のほか、木板などを柱の溝にはめ込んでいく方式など、設置場所の規模や用途に応じた多様な形態が存在する。天井川が存在する地域、海抜ゼロメートル地帯、および港湾地域などに数多く設置されている。また、海岸線の堤防や防潮堤に設けられ、津波や高潮の侵入を防ぐ役割を持つゲート(防潮扉)も一般に陸閘と呼ばれる。
陸閘のなかでも、両側の柱に縦溝を刻み、その溝に角材や木板を上から積み重ねるようにしてはめ込んで水をせき止める構造のものは、特に角落とし(かくおとし)と呼ばれる。

津波・高潮対策と運用の変遷
太平洋岸の漁港などでは、防潮堤の開口部から津波や高潮が侵入することを防ぐため、防潮扉として陸閘が広く利用されてきた。災害時には迅速な閉鎖が不可欠であるため、所管する国土交通省や農林水産省では、緊急時における陸閘の操作体制の強化や、水門・陸閘の自動化・遠隔操作化を推進している。

たとえば宮城県では、2004年に策定した「大規模地震時における津波防災対策」において、当時管理していた陸閘のうち「角落とし」形式のものについて、鉄製横引きゲートへの改修、完全閉鎖(廃止)、あるいは常時閉鎖などの対策を実施した。当時は沿岸部の消防団などが閉鎖作業を担当しており、分刻みの作業マニュアルを整備するなどの対応がとられていた。

しかし、2011年に発生した東日本大震災では、陸閘そのものの倒壊や流失に加え、停電等によって遠隔操作ができなくなったこと、また閉鎖作業にあたった消防団員らが作業に手間取って津波に巻き込まれ殉職する事例が相次いだ。この教訓を受け、津波対策を講じる全国の自治体では、水門や陸閘をあらかじめ常時閉鎖する方針や、津波到達までの時間が切迫している場合には消防団員らに閉鎖作業を行わせない運用への転換が進められている。
よくある質問
陸閘とはどのような施設ですか?
「角落とし」とは何ですか?
東日本大震災以降、陸閘の運用にどのような変化がありましたか?
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参考文献
- 「津波・高潮対策における水門・陸閘等管理システムガイドライン」 国土交通省河川局海岸室ほか、2006年4月27日
- 「大規模地震時における津波防災対策」 宮城県、2004年9月
- 「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告」 中央防災会議、2011年9月28日
- 「消防団員ら水門閉鎖不要 南海地震の高知県方針」 『高知新聞』2011年10月19日付
- 「戦後最悪の台風がきっかけ! 名古屋で60年活躍の激レア設備『りっこうもん』もうすぐ姿消すか?」 乗りものニュース、2026年8月2日