地形学
羊背岩(ロッシュ・ムトネ):氷河侵食による地形的特徴と形成プロセス
羊背岩(ロッシュ・ムトネ)は、氷河の侵食作用によって形成される特徴的な凸地形です。その形成メカニズム、氷河の流動方向を示す指標としての役割、および地形的特徴について解説します。
📌 主なポイント
- ✓羊背岩は氷河の侵食作用によって形成される非対称な凸地形である。
- ✓上流側は磨食により滑らかに研磨され、下流側はプラッキングにより急峻な破断面となる。
- ✓氷河の流動方向を特定するための重要な指標となる。
- ✓名称は18世紀末にオラス・ド・ソシュールが命名し、1840年にルイ・アガシーが学術用語化した。
羊背岩(ようはいがん、仏: roche moutonnée)は、氷河の侵食作用(氷食)によって形成される、岩盤の凸地形である。氷河の流動方向に沿って、上流側は滑らかに研磨され、下流側は急峻な破断面を持つという非対称な形状が最大の特徴である。この形状から、過去の氷河の流動方向を推定することが可能である。
形成メカニズム
羊背岩の形成には、氷河による二つの主要な侵食作用が関与している。
- 磨食(研磨侵食):氷河底に運ばれる岩石の破片や砂が、基盤岩をやすりのように削り、滑らかな表面を作り出す作用。氷河の上流側で顕著に発生する。
- プラッキング(剥ぎ取り作用):氷河が岩盤の節理や割れ目に沿って岩塊を物理的に引き剥がす作用。氷河の下流側で発生し、急峻な崖状の地形を形成する。
この二つの作用の組み合わせにより、上流側は緩やかな傾斜、下流側は急な傾斜という非対称なプロファイルが完成する。
地形的特徴
羊背岩の規模は多様であり、高さや長さが数メートル程度のものから、ルントリンゲと呼ばれる数百メートルから数キロメートルに及ぶ巨大なものまで存在する。節理が発達した花崗岩や結晶質岩の地域では、大規模な羊背岩が形成されやすい。
また、羊背岩が連続して群れをなしている地形は羊群岩と呼ばれ、研磨された岩盤が広範囲に露出する場所は羊背石原と称される。これらの表面には、氷河の移動によって刻まれた擦痕(さっこん)や条線が観察されることが多く、氷河の活動を物語る重要な地質学的証拠となる。
語源と歴史
「ロッシュ・ムトネ(roche moutonnée)」という名称は、18世紀末にアルプスでオラス・ド・ソシュールによって命名された。当時流行していた羊の脂で整髪されたカツラ(moutonnée)の形状に、波打つ岩の表面が似ていたことに由来する。1840年、ルイ・アガシーによって学術用語として定着した。
よくある質問
羊背岩から氷河の流動方向はわかりますか?
はい。羊背岩は上流側が緩やかで滑らか、下流側が急峻という非対称な形状をしているため、その形状から氷河がどちらの方向に流れていたかを特定できます。
羊背岩と羊群岩の違いは何ですか?
羊背岩は単体の岩盤地形を指すのに対し、羊群岩はそれらが連続して群れをなしている状態を指します。
プラッキングとはどのような作用ですか?
プラッキング(剥ぎ取り作用)は、氷河が岩盤の割れ目や節理に沿って、岩塊を物理的に引き剥がす侵食作用のことです。羊背岩の下流側で急な崖を作る主な要因となります。
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氷河侵食地形学擦痕ドラムリン
参考文献
木村敏雄他『新版地学辞典』第3巻、古今書院、1973年。
日下哉『図解日本地形用語辞典』東洋書店、2002年。
地学団体研究会地学事典編集委員会編『増補改訂地学事典』平凡社、1970年。
町田貞他『地形学辞典』二宮書店、1981年。
ヘルベルト・ウィルヘイミー著、谷岡武雄・北野善憲訳『地形学II巻』地人書房、1979年。
日下哉『図解日本地形用語辞典』東洋書店、2002年。
地学団体研究会地学事典編集委員会編『増補改訂地学事典』平凡社、1970年。
町田貞他『地形学辞典』二宮書店、1981年。
ヘルベルト・ウィルヘイミー著、谷岡武雄・北野善憲訳『地形学II巻』地人書房、1979年。