移動と宿泊を伴う活動としての旅行の歴史と形態

📌 主なポイント
- ✓旅行とは、見物・保養・調査などのため、居所を離れてよその土地へ行くことである。
- ✓日本の縄文時代には、すでに陸路や丸木舟を用いた海路によって遠方の集落との間で交易の旅が行われていた。
- ✓江戸時代には五街道や宿場町などの交通インフラが整備され、一般庶民の間でも参詣などを名目とした旅行が広く普及した。
- ✓ヨーロッパでは4世紀頃から巡礼が始まり、旅人の世話をするための施設がホスピスや病院の起源となった。
旅行(りょこう、トラベル、英: travel)とは、見物、保養、調査などの目的で、自らの住む居所を離れて別の土地へ赴くことを指す。
広辞苑や大辞泉などの辞書によれば、古くは遠隔地への移動に限らず、住居を離れる行為一般を「たび」と呼んでいた。狩猟採集の時代から人間は移動を行っており、食料の獲得や特産品の交換に伴う移動が旅行の原型となった。
歴史的変遷
日本における旅の歴史
日本列島では、縄文時代の遺跡から遠方の集落との間で特産品の交換(交易)が行われていたことが出土品から判明している。当時は陸路のほか、丸木舟を用いた海路による交流も存在した。
弥生時代以降、農民は定住生活に入ったが、猟人、山人、漁師などによる食糧採集のための移動は継続した。また、中世から近世にかけては、商工業者や芸能民、宗教的な目的を持つ人々による移動が盛んになった。平安時代末期から鎌倉時代にかけては熊野詣が盛んに行われ、室町時代以降は伊勢参りや西国三十三所、四国八十八箇所といった巡礼の旅が一般庶民の間にも広がった。
江戸時代に入ると、徳川幕府によって五街道や宿場町が整備され、治安が改善されたことで、庶民による伊勢参宮などの旅行が飛躍的に発展した。幕末から明治期にかけて日本を訪れたイギリスの外交官アーネスト・サトウは、著書の中で日本人が大の旅行好きであると記している。
近代に入り、鉄道や汽船などの交通手段が発達すると、長距離移動が容易になった。1886年には、東京師範学校による「長途遠足」が実施され、これが修学旅行の先駆けとされる。一方で、第二次世界大戦中の1944年(昭和19年)には決戦非常措置要綱に基づく旅客輸送制限が閣議決定され、通勤・通学以外の旅行は制限および自粛が徹底された。
ヨーロッパおよび海外の歴史
ヨーロッパでは4世紀頃からキリスト教の聖地や修道院への巡礼が始まっていた。巡礼路には旅人を保護するための施設が置かれ、これが後のホスピスや病院の起源となった。
大航海時代には、クリストファー・コロンブスやヴァスコ・ダ・ガマによる航海が行われ、新大陸やインドへの航路が確立された。17世紀以降、イギリスの裕福な市民層の間では、学業の仕上げとして長期にわたる海外遊学である「グランドツアー」が行われるようになり、19世紀半ばにはトーマス・クック・グループなどの旅行会社が創業した。
旅行の分類
旅行の形態は多岐にわたり、さまざまな基準で分類される。
- 移動手段による分類: 徒歩旅行、自転車旅行、自動車旅行、鉄道旅行、船旅、飛行機旅行など
- 参加人数・関係性による分類: 一人旅、グループ旅行、家族旅行、団体旅行など
- 目的地による分類: 国内旅行、海外旅行、温泉旅行、離島旅行など
- 目的による分類: 帰省旅行、修学旅行、商用旅行、研修旅行など
目的地の設定
旅行における目的地は多岐にわたり、親類や知人宅の訪問(VFR)、景勝地、聖地や霊場、史跡、都市、温泉地などが選ばれる。また、明確な目的地を定めず、期間や移動そのものを主たる目的とする放浪の旅やツーリングなどが行われることもある。
よくある質問
旅行の語源や本来の意味は何ですか?
江戸時代の旅行が盛んになった理由は何ですか?
ヨーロッパにおける巡礼の旅はいつ頃から始まりましたか?
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参考文献
- 旅行(リョコウ)とは - コトバンク
- 広辞苑 第六版、p. 12308【旅】
- 新城常三「旅」『改訂新版 世界大百科事典』
- 山田康弘『縄文時代の不思議と謎』実業之日本社、2019年
- アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新(上)』岩波書店、1990年