物理学

物理学における流束の概念と数学的定義

物理学における流束の概念と数学的定義
物理学における流束(フラックス)の定義、数学的表現、および質量流束や熱流束などの各種物理量への応用について解説します。

📌 主なポイント

  • 流束(フラックス)は、流れの中やベクトル場において、単位時間あたりに検査面を通過する量を表す。
  • 単位面積あたりの流束は流束密度と呼ばれる。
  • 流束の概念は質量流量だけでなく、熱流束、磁束、電流、拡散流束など多様な物理量に拡張される。

流束(りゅうそく、英: flux)とは、流れの中、あるいはベクトル場を流れに見たてたときに、そこで流れているものの量を指し、単位時間あたりの検査面通過量を意味する。英語のままフラックスと呼ばれることもある。輸送現象に限らず様々なベクトル場について定義され、必ずしも何らかの実体が物質として流れているとは限らない。また、単位面積あたりの流束である流束密度(flux density)を指して単に流束と呼ぶ場合もある。

数学的定義と流束密度

任意の時刻tと位置xについて、速度場v(t, x)、密度場ρ(t, x)の流れ場の中にある断面Sを単位時間あたりに通り抜ける物理量は、その通過する質量として次のように表される。

質量流量を表す数式
質量流量の定義式

これが流束の基本的な概念であり、質量流量とも呼ばれ、単位は[kg/s]である。この断面Sを微小にして極限をとったときの値を単位面積あたりで表したものが流束密度(質量流束密度)であり、ρvに等しくなる。

密度を伴うベクトル場の流束を表す数式
ベクトル場の流束の定義式

密度を伴う一般的なベクトル場A(t, x)においては、断面Sを貫く流束は上記のように面積分を用いて定義される。

保存則と線形近似

流束は、流れている実体の保存性と直接関連付けられる。領域Vの外との境界(表面)を∂Vとするとき、領域V内における実体の減少は、境界∂Vにおける外向き流束と等しくなる。

境界上の流束と領域内の減少量を結びつける数式
ガウスの発散定理に関連する保存則の表現

移動現象のモデル化においては線形近似が用いられることが多く、このとき流束は対応するポテンシャルUの差に比例する。

ポテンシャル差と流束の関係を表す数式
インピーダンスを用いた線形近似の表現

ここで導入される比例係数Zはインピーダンスと呼ばれる。

各種物理量における流束の一覧

流束の概念は、力学、電磁気学、熱力学などの多様な物理分野において拡張されて用いられている。

流束の種類(SI単位)流束密度(SI単位)流れる量(SI単位)ポテンシャル(SI単位)備考
質量流量 (kg/s)質量流束密度 (kg/m2s)質量 (kg)圧力差 (Pa)
体積流量 (m3/s)速度 (m/s)体積 (m3)圧力差 (Pa)ダルシーの法則など
運動量流束=力 (N)運動量流束密度=応力 (Pa)運動量 (kg m/s)ニュートンの粘性法則など
エネルギー流束 (W)エネルギー流束密度 (W/m2)エネルギー (J)
熱流束 (W)熱流束密度 (W/m2)熱 (J)温度差 (K)フーリエの法則など
放射束 (W)放射発散度 (W/m2)放射エネルギー (J)シュテファン=ボルツマンの法則など
電流 (A)電流密度 (A/m2)電荷 (C)起電力 (V)オームの法則など
磁束 (Wb)磁束密度 (T)-起磁力 (A)マクスウェルの方程式など
拡散流束 (mol/s)拡散流束密度 (mol/m2s)物質量 (mol)濃度差フィックの法則など

よくある質問

流束と流速の違いは何ですか?
流速は流体が移動する速さと向き(速度場)を表す物理量であるのに対し、流束は単位時間あたりに特定の断面を通過する物質や物理的な量の総量を指します。
流束の単位は何ですか?
流束の単位は、対象とする物理量によって異なります。例えば質量流量であればキログラム毎秒(kg/s)、熱流束やエネルギー流束であればワット(W)となります。

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参考文献

巽友正『連続体の力学』岩波書店〈岩波基礎物理シリーズ〉、1995年。ISBN 4-00-007922-0。
浅野康一『物質移動の基礎と応用』丸善、2004年。ISBN 4-621-07356-7。