塩湖の科学的定義と生態系および資源利用の概要

📌 主なポイント
- ✓日本陸水学会では、乾燥地域にあって総塩濃度が 0.5 g/L 以上の湖を塩湖と定義している。
- ✓塩分濃度によって subsaline から hypersaline(超塩湖)までいくつかの段階に分類される。
- ✓ヒリアー湖やラック・ローズなどの一部の塩湖は、高塩分に適応した微生物やプランクトンの影響によりピンク色や赤色を呈する。
- ✓歴史的に食塩の供給源として利用されてきたほか、現代ではリチウムなどの資源採取地としても重要視されている。
塩湖(えんこ、英語: salt lake、saline lake)または塩水湖(えんすいこ)とは、塩分を多く含んだ水をたたえる湖の総称である。鹹湖(かんこ)、鹹水湖(かんすいこ)とも呼ばれ、淡水をたたえる淡水湖とは対照的な存在である。

定義と分類
日本陸水学会では、乾燥地域にあって湖水に含まれる総塩濃度が 0.5 g/L 以上の湖を塩湖と定義している。一方、中国では湖水1L当たりの塩類が50グラムを超える湖沼を指す場合がある。なお、海水が流入することで塩濃度が高くなる宍道湖や中海のような汽水湖は塩湖には含まれず、半塩湖と称されることがある。
歴史上の文献資料に塩湖と記されている場合、科学的な数値による判断は困難であるが、塩類の析出に関する記述や塩業の生産活動の記録がある湖は塩湖とみなされる。塩湖は塩類の濃度によって以下のように細分化される。
- subsaline: 0.5–3パーミル(淡水湖と塩湖の中間)
- hyposaline: 3–20パーミル(低濃度の塩湖)
- mesosaline: 20–50パーミル(中等度の塩湖)
- hypersaline(超塩湖): 50パーミル以上(海水の平均的な塩分濃度である約35パーミルを超える高濃度なもの)

水質組成と形成要因
塩湖の水質組成は湖によって異なり、海塩に由来するものや地質に由来するものがあるほか、流域の気候条件などの影響を受ける。一般的には、湖水の蒸発に伴う継続的な水位低下によって塩分が濃縮されることで形成される。しかし、亜寒帯湿潤気候に属し、湖水位が上昇しながらも塩分濃度が増加しているイシク湖のような例も存在する。

生態系と生物相
魚類が生息し、沿岸住民の漁業対象となっている塩湖がある一方で、死海やモノ湖のように魚類が生存できないほど塩分濃度が高い塩湖や塩性湿地も存在する。こうした高塩分環境では、高い塩分に適応した塩生植物や藻類、細菌などの特異な生物相が見られる。

オーストラリア大陸南西沖のミドル島にあるヒリアー湖は、海水の約10倍という高い塩分濃度に適応した極限環境微生物が原因とみられるピンク色の湖水で知られている。同様にピンク色や赤色を示す湖としては、オーストラリアのハットラグーン、セネガルのラック・ローズ、メキシコのピンクラグーン、ボリビアのラグナ・コロラダなどが挙げられる。

資源の利用
塩湖やそれに伴う塩類平原は天然の塩田として利用され、古来より湖塩を採取することで海から離れた内陸部に食塩を供給してきた。現代においては、電気自動車(EV)などの電池材料として需要が高まるリチウムが、南米のアタカマ塩湖やウユニ塩湖などで生産されている。
よくある質問
塩湖とはどのような湖ですか?
汽水湖は塩湖に含まれますか?
なぜ一部の塩湖はピンク色に見えるのですか?
塩湖は現代においてどのような産業に利用されていますか?
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参考文献
費傑「環境の変遷と人類の活動を背景とする渭河平原における塩湖の退化と枯渇」『学習院大学国際研究教育機構研究年報』第4巻、2018年、154-181頁。
齋藤圭「中央アジア・イシク湖及びその流域の水質に関する地理学的研究」『法政地理』第51巻、2019年。
Hammer, U. T. (1986). Saline Lake Ecosystems of the World. Springer.
“オーストラリアから ピンクの湖 観光客続々”. 日本経済新聞夕刊. 2017年5月23日.
“EV電池は塩湖生まれ”. 日本経済新聞. 2016年6月28日.