日本の古典文学
猿蓑:松尾芭蕉の指導のもと編まれた蕉風俳諧の代表的撰集

向井去来と野沢凡兆が編集し、1691年に刊行された俳諧七部集の一つ『猿蓑』の概要や構成、歴史的背景について解説します。
📌 主なポイント
- ✓『猿蓑』は向井去来と野沢凡兆が編集した俳諧撰集であり、1691年(元禄4年)7月3日に刊行された。
- ✓書名は松尾芭蕉の句「初しぐれ猿も小蓑をほしげ也」に由来している。
- ✓全2冊(乾・坤)からなり、発句部には118名による382句が収められている。
- ✓俳諧七部集の一つに数えられ、森川許六からは「俳諧の古今集也」と評された。
猿蓑(さるみの)は、江戸時代の元禄期に編集・刊行された俳諧撰集であり、「俳諧七部集」の一つに数えられる。向井去来と野沢凡兆が編集に当たり、1691年(元禄4年)7月3日に井筒屋庄兵衛より刊行された。半紙本2冊(乾・坤)で構成されている。

書名は、巻頭に置かれた松尾芭蕉の句「初しぐれ猿も小蓑をほしげ也」に由来している。
構成と内容
本書は乾・坤の2冊から成る。
- 乾の巻:宝井其角の序文に続き、巻1から巻4まで四季の発句を冬・夏・秋・春の順序で収める。
- 坤の巻:巻5として4つの歌仙(「鳶の羽も」「市中は」「灰汁桶の」「梅若菜」)を収め、巻6として芭蕉の俳文「幻住庵記」および向井震軒による「後題」、幻住庵への訪問客や文音の発句35句から成る「几右日記」を収録し、内藤丈草の跋文で締めくくられている。
発句部は合計382句であり、入集者は118名に及ぶ。作者別では野沢凡兆が41句、松尾芭蕉が40句、向井去来および宝井其角が各25句と続き、一句のみの作者も73名にのぼるなど、当時の蕉門の俳人が幅広く網羅されている。

編集の背景と評価
向井去来の著書『俳諧問答』には、芭蕉の奥羽行脚以降に当門の俳諧が一変したことや、去来らが幻住庵に仮寓する芭蕉のもとを訪ねたり落柿舎に招いたりしながら指導を受け、一丸となって編集作業にあたったことが記されている。
松尾芭蕉が監修者として全面的に関与しており、『おくのほそ道』行脚のあとの新風を具現化した傑作として評価されている。後世においても、森川許六が『宇陀法師』の中で「俳諧の古今集也」と評するなど、蕉風俳諧の確立期を代表する撰集として位置づけられている。
よくある質問
『猿蓑』の編集者は誰ですか?
向井去来と野沢凡兆が編集を担当し、松尾芭蕉が監修者として全面的に関与しました。
『猿蓑』という書名の由来は何ですか?
巻頭に収められた松尾芭蕉の句「初しぐれ猿も小蓑をほしげ也」に由来しています。
『猿蓑』が刊行されたのはいつですか?
1691年(元禄4年)7月3日に井筒屋庄兵衛より刊行されました。
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参考文献
岡本勝、雲英末雄『近世文学研究事典』(新版)おうふう、2006年2月。
佐藤勝明編『21世紀日本文学ガイドブック5:松尾芭蕉』ひつじ書房、2011年10月。
神作研一『てのひらの江戸:古典籍を旅する』東京四季出版、2025年11月。