海洋学

海水の化学的組成と海洋環境

海水の化学的組成と海洋環境
海水は地球上の水の大部分を占める塩水であり、その化学的組成や海洋環境における役割について解説します。

📌 主なポイント

  • 海水は地球上の水分の約97%を占める。
  • 海水の平均塩分濃度は約3.5%である。
  • 海洋は地球の炭素循環において最大の炭素リザーバーの一つである。

海水(かいすい)とは、地球上の海を構成する塩分を含んだ水のことです。地球上の水分の約97%を占めており、地球環境や気候の維持において極めて重要な役割を果たしています。海水の量は約13.7億立方キロメートルに達し、その密度は一般的に1.02から1.035 g/cm³の範囲にあります。

化学的組成

海水の塩分濃度は場所によって異なりますが、溶存成分の比率は海洋全体でほぼ一定に保たれています。海水に含まれる主要な成分は、塩化ナトリウムをはじめとする塩類です。

硫酸イオンの化学構造
硫酸イオン(SO4²⁻)の化学構造
炭酸水素イオンの化学構造
炭酸水素イオン(HCO3⁻)の化学構造
ホウ酸の化学構造
ホウ酸(H3BO3)の化学構造

海水中の主要なイオン組成は以下の通りです。

成分化学式質量%
塩化物イオンCl⁻1.8980
ナトリウムイオンNa⁺1.0556
硫酸イオンSO₄²⁻0.2649
マグネシウムイオンMg²⁺0.1272
カルシウムイオンCa²⁺0.0400
カリウムイオンK⁺0.0380
シンガポールの海面
シンガポール近海の海水
タイの海中の様子
タイのシミラン諸島における海中の青

炭素循環と海洋

海洋は地球上の炭素循環において巨大なリザーバーとして機能しています。特に深海には膨大な量の炭素が保持されており、地球の気候変動を緩和する上で重要な役割を担っています。また、海水中の硫酸イオンは植物プランクトンの生理作用を通じてジメチルスルフィド(DMS)へと還元され、大気中へ放出されることで気候に影響を与えることが知られています。

塩分と生物

海水の塩分濃度は平均して約3.5%ですが、河口域や氷河の融解地域では汽水化が進みます。多くの脊椎動物の体液塩分濃度は0.8%から0.9%程度であり、これはかつての海水の塩分濃度を反映しているという説もあります。一方で、軟体動物や棘皮動物などの無脊椎動物の多くは、海水と等張な体液を維持しています。

ナトリウムイオン
ナトリウムイオン(Na⁺)
マグネシウムイオン
マグネシウムイオン(Mg²⁺)
カルシウムイオン
カルシウムイオン(Ca²⁺)
カリウムイオン
カリウムイオン(K⁺)
ストロンチウムイオン
ストロンチウムイオン(Sr²⁺)
塩化物イオン
塩化物イオン(Cl⁻)

よくある質問

海水の塩分濃度は世界中で一定ですか?
いいえ、蒸発量や降水量、河川の流入量などの影響により、場所によって3.1%から3.8%程度のばらつきがあります。
なぜ海水は塩辛いのですか?
地球形成初期の酸性環境下で地殻が溶け出し、アルカリ金属やアルカリ土類金属が中和されたことに由来します。その後も地殻からの成分供給が続いています。
海水は飲用できますか?
いいえ、塩分濃度が高く浸透圧がヒトの体液よりも高いため、水分補給には適しません。大量に摂取すると脱水や健康被害を引き起こす可能性があります。

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参考文献

  • デジタル大辞泉「海水」
  • たばこと塩の博物館「世界の塩資源」
  • 松井義人、一国雅巳 訳『メイスン 一般地球化学』岩波書店、1970年
  • World Ocean Atlas 2009, NOAA