成層圏突然昇温の仕組みと気象学的特徴
📌 主なポイント
- ✓成層圏突然昇温(SSW)は、数日間で20K以上の急激な気温上昇が成層圏で発生する現象である。
- ✓1952年にベルリン自由大学のリチャード・シェルハークによって初めて発見された。
- ✓世界気象機関(WMO)の定義では、1週間以内に25K以上の昇温があり、緯度60度以北で西風が東風に反転するものを大昇温とする。
- ✓南半球での大昇温の発生は極めて稀であり、観測されている限りでは2002年9月の一例のみである。
成層圏突然昇温(せいそうけんとつぜんしょうおん、英: Sudden stratospheric warming または Stratospheric sudden warming, SSW)とは、日々の気温変化が比較的緩やかな成層圏において、短期間のうちに急激な気温上昇が観測される気象現象である。北半球の寒候期にあたる秋から春にかけて発生することが多い。
定義と分類
世界気象機関(WMO)による定義では、成層圏において1週間以内に25ケルビン(K)以上の気温上昇が起き、さらに10ヘクトパスカル高度またはそれより下層において、緯度帯で平均した昇温域が高緯度方向(緯度60度より高緯度)へ移動する現象を指す。また、これに伴う循環の変化により、緯度60度以北で通常は西風である風向が東風へと反転するものを大昇温(major warming)、反転に至らないものを小昇温(minor warming)と分類する。
昇温の形態には、地球を1周する波数が2のプラネタリー波によって極域の低圧・高圧領域がそれぞれ2つに分裂する波数2型と、波数が1のプラネタリー波によって低圧領域が低緯度へ、高圧領域が高緯度へ移動する波数1型が存在する。さらに、北半球の3月頃や南半球の11月頃に大昇温が発生すると、高温高圧の状態が維持されたまま夏季へと移行することがあり、これを最終昇温(final warming)と呼ぶ。
発見の経緯
1952年、ドイツのベルリン自由大学でラジオゾンデを用いた成層圏の観測・天気図作成を行っていたリチャード・シェルハーク(Richard Scherhag)によって初めて発見された。同年2月23日、高度30キロメートル付近の気温が前日の-50度から-12度へと急上昇している記録が観測された。当初は通報数値の誤読が疑われたものの、数日間にわたり高温状態が観測され続け、データが正確であることが確認された。
発生メカニズム
成層圏の冬極は日射が届かないため赤外放射によって冷却され、ブリューワー・ドブソン循環による下降流の断熱加熱はあるものの全体として冷却が勝る。そのため、低温低圧となって低気圧性の循環に伴う西風が吹く。ここに数千キロメートル以上の波長を持つプラネタリー波が上方から伝播すると、西風が南北に大きく蛇行し、周辺の空気塊が極側へと移動する。
極域に流入した空気塊は行き場を失い、成層圏で断熱加熱を伴いながら下降するため、突然昇温が引き起こされる。なお、これと同時に中間圏では上昇流に伴う断熱冷却によって気温が低下する現象が観測される。夏季の極域は高気圧性の東風が吹いており、プラネタリー波の伝播条件を満たさないため、同様の昇温現象は基本的に発生しない。
南半球においてはプラネタリー波の振幅が北半球に比べて小さいため、成層圏突然昇温自体が極めて稀であり、観測史上の大昇温は2002年9月に発生した一度のみである。
テレコネクションとの関係
成層圏突然昇温の発生頻度や特徴は、他の大気・海洋大循環の変動と関連していることが指摘されている。例えば、成層圏準2年周期振動(QBO)や太陽活動の11年周期との関連性が観測されているほか、赤道域のエルニーニョ・南方振動(ENSO)がエルニーニョ状態にある場合には、東西波数1のプラネタリー波の振幅が大きくなり、その上方伝播によって突然昇温の発生頻度が増加するという研究が示されている。
よくある質問
成層圏突然昇温とはどのような現象ですか?
成層圏突然昇温はどのようにして発見されましたか?
南半球で成層圏突然昇温が起きにくいのはなぜですか?
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参考文献
- 気象用語集 「成層圏突然昇温」(2006年アーカイブ)
- 第10〜13回超高層大気勉強会 成層圏と中間圏の大気・まとめ(冨川喜弘、国立極地研究所)
- 一般気象学,小倉義光,東京大学出版会
- T. Matsuno, 1971, A dynamical model of the Stratospheric Sudden Warming, Journal of the Atmospheric Sciences, 28, 1479–1494.