文化・歴史

西洋(概念)

西洋(概念)
西洋という概念の歴史的変遷と、東洋との対比における文化的・地理的意味合いを解説します。

📌 主なポイント

  • 西洋は歴史的に東洋との対概念として形成された。
  • 17世紀の中国では、西洋は主に海域を指す地理的な呼称であった。
  • 明治時代以降、日本において西洋は文化や文明の総称として定着した。

西洋(せいよう、英: the West、Occident)は、主に東洋(the East、Orient)との対比において用いられる概念です。歴史的にはユーラシア大陸の西端と東端に位置する二つの文化圏を指す言葉として定着しましたが、その定義は時代や文脈、地域によって大きく異なります。

歴史的背景と海域呼称

17世紀の中国では、海域を東西に分ける呼称として「東洋」や「西洋」という言葉が用いられていました。当時の文献では、ブルネイ以東を東洋、それ以西を西洋とする地理的な区分がなされていました。1602年にマテオ・リッチが作成した『坤輿万国全図』には、インド洋を「小西洋」、ポルトガル沖を「大西洋」と記すなど、世界地図上の海域名称としてこれらの語が導入されました。

山海輿地全圖(1607年頃)
山海輿地全圖(1607年頃)。小東洋、小西洋、大東洋、大西洋の記述が見られる。

日本においても、江戸時代にこれらの地図が伝来したことで海域呼称としての概念が広まりました。幕末以降、西洋諸国との交流が活発化する中で、「太平洋」や「インド洋」といった近代的な地理名称が定着し、海域呼称としての「東洋」「西洋」は次第に使われなくなりました。

文化概念としての西洋

明治時代以降、西洋という言葉は単なる地理的な呼称を超え、政治、経済、科学技術、文化、社会といった人間の活動全体を総称する文化概念として定着しました。新井白石の『西洋紀聞』など、江戸時代からヨーロッパの知識を紹介する文献で「西洋」という語が用いられていましたが、明治維新後の「脱亜入欧」の潮流の中で、西洋はアジア(東洋)に対する対義語として明確に定義されるようになりました。

文明の衝突による西側世界
ハンティントン『文明の衝突』による西側世界(青色)。

オクシデントとオリエンタリズム

欧米では「オクシデント(Occident)」が西洋を指す言葉として用いられます。エドワード・サイードは著書『オリエンタリズム』において、西洋が東洋に対して抱く蔑視的なイメージを批判的に分析しました。これに関連して、西洋の利益優先的な考え方を「オクシデンタリズム」と呼ぶ解釈も存在しますが、これらの概念は複雑な歴史的背景を持っており、一律に定義することは困難です。

よくある質問

西洋とオクシデントは同じ意味ですか?
オクシデントは英語で西洋を指す言葉であり、概念的には対応していますが、使用される文脈や歴史的背景には違いがあります。
西洋という言葉はいつから使われていますか?
17世紀の中国の文献に海域呼称として登場し、日本では江戸時代に地理書を通じて伝わりました。文化概念として定着したのは明治時代以降です。

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参考文献

  • 佐藤正幸. “明治初期の英語導入に伴う日本語概念表記の変容に関する研究”. 山梨県立大学. 2020年1月18日閲覧。
  • kotobank 「洋」
  • kotobank 「西洋」
  • kotobank ブリタニカ国際大百科事典 「東洋」
  • エドワード・サイード 『オリエンタリズム』(下) 今沢紀子訳、平凡社〈平凡社ライブラリー〉、1993年。