石灰岩の性質、成因および地形形成に関する科学的解説

📌 主なポイント
- ✓石灰岩は炭酸カルシウム(CaCO3)を50%以上含む堆積岩である。
- ✓成因にはサンゴや貝殻などの遺骸が堆積した生物起源と、温泉成分などの化学的沈殿がある。
- ✓炭酸カルシウムが雨水に溶食されることで、秋吉台のようなカルスト地形や鍾乳洞が形成される。
- ✓セメントの原料や石材、製鉄用など工業的用途に大量に採掘・利用されている。
石灰岩(せっかいがん、英語: limestone)は、炭酸カルシウム(CaCO3、方解石または霰石)を50パーセント以上含む堆積岩である。純粋な炭酸カルシウムの比率が高いものは白色を呈するが、不純物の含有量により灰色や茶色、黒色など多様な色彩を示す。

鉱物学や地学の分野において、地上の鉱物中に見られる炭酸カルシウムの結晶構造には、六方晶系の方解石型と斜方晶系のアラゴナイト(霰石)型の2種類が存在することが知られている。
性質と結晶構造
肉眼では結晶化しているように見えない場合でも、ミクロのレベルでは結晶構造が存在する。地上や地下浅くで結晶化させた場合は方解石型になるが、地下深くの高温高圧下で結晶化した場合はアラゴナイトになり、貝殻など生物活動によって結晶化した場合もアラゴナイト型をとることがある。アラゴナイトは地上の雰囲気下では徐々に方解石に変化(転移)する性質を持つため、地表に露出する一般的な石灰岩は方解石型が主流となっている。
成因
石灰岩の成因は大別して生物起源と化学的沈殿の2種類に分類される。
生物起源
主に熱帯から亜熱帯の比較的浅い海域において、炭酸カルシウムを主成分とするサンゴ、海棲動物の骨、貝殻などが堆積し、その後の続成作用によって形成されたものである。生物起源の石灰岩には、明瞭な化石を含むものも少なくない。

地質時代を通じた顕生代においては、古生代のオルドビス紀頃、石炭紀からペルム紀頃、そして中生代の白亜紀頃の3回にわたり、海生生物起源の石灰岩が大量に生成された。例えば、古生代後期から中生代に存在したテチス海で生成した石灰岩は、現在ではアルプス山脈やヒマラヤ山脈、極東アジアの各地で見ることができる。また、イギリスのドーバー海峡に見られる白亜(チョーク)も海生微生物起源の石灰岩の一種である。
化学的沈殿
水から炭酸カルシウムそのものが化学的に沈殿したもので、通常は化石を含まない。石灰分を多く含む温泉水やカルスト泉の沈殿物としての生成が多く、これを石灰華やトラバーチンと呼ぶ。

世界遺産に登録されているトルコのヒエラポリス-パムッカレの石灰棚がその代表例であり、日本国内では白骨温泉などの析出物が知られている。また、石灰洞内の鍾乳石などの洞窟生成物も化学的沈殿によって形成される。
産出地と地形の特徴
石灰岩は、堆積・沈殿した元の場所に産出する原地性のものと、移動して二次的に堆積した非原地性のものに分けられる。日本国内の石灰岩産地は大部分が原地性である。
石灰岩は比較的風化されにくいため、山脈中の高いピークや急峻な山体を形成することが多い。ヒマラヤ山脈のエベレスト頂上やアルプス山脈のアイガーなどは石灰岩を含んで構成されている。日本国内では伊吹山、藤原岳、武甲山などが全山あるいは大部分が石灰岩でできている。



主成分である炭酸カルシウムは雨水や地下水に溶解しやすいため、溶食作用によってドリーネや鍾乳洞を発達させ、特徴的なカルスト地形を形成する。日本国内では山口県の秋吉台、福岡県・大分県にまたがる平尾台などが代表的なカルスト地形として知られている。




石材および工業用原料としての利用
石灰岩は「ライムストーン」の名称で建築用石材としても広く利用されており、古代エジプトのピラミッドなどの建造物にも使用された歴史がある。また、変成を受けて再結晶化したものは大理石(結晶質石灰岩)と呼ばれ、彫刻や建物の内装装飾に用いられる。
工業分野においては「石灰石」として大量に採掘され、セメントの主原料をはじめ、ガラスの原料や製鉄のフラックス、白色顔料の素材などとして現代社会のインフラを支える重要な地下資源となっている。日本国内においては、比較的採掘しやすい場所が高品位な鉱床に恵まれており、数少ない自給可能な鉱物資源の一つとして位置づけられている。
よくある質問
石灰岩の主成分は何ですか?
石灰岩はどのようにしてできますか?
カルスト地形はどのように形成されますか?
石灰岩は大理石と同じものですか?
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参考文献
- 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年、126頁。ISBN 4-8181-8401-2。
- 地球大紀行2 日本放送出版協会、1987年。
- 角田清美「古代から中世前期における石灰と漆喰の利用」専修人文論集88巻、49-76頁、2022年。