民法における占有権の制度と法的性質の解説
📌 主なポイント
- ✓占有権は物に対する事実上の支配という状態そのものに法的保護を与える物権である。
- ✓日本の民法は占有権の取得要件として自己のためにする意思(占有意思)を必要とする主観主義をとる。
- ✓占有の訴えと本権の訴えは相互に干渉しない仕組みになっている。
占有権(せんゆうけん)とは、物に対する事実上の支配状態そのものを法律要件として生ずる物権である。日本の民法では第180条以下に規定が置かれている。
占有権の意義と法的性質
占有を法律上正当づける権利である所有権や地上権、質権などの権利を「本権」と呼ぶのに対し、占有権は物に対する事実上の支配という状態そのものに法的保護を与える権利である。
近代社会において自力救済が原則として禁止される中、事実上の支配状態に法的保護を与えることで社会秩序の維持を図り、取引の安全を確保するとともに、権利の外観を保護して真の権利者が本権存在の証明の負担から解放されることを目的としている。これにより、例えば物を窃取された者は本権を有しながら占有権を失い、窃取した者は本権がないまま占有権を有するという状態が生じ得る。
所持と占有意思
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得される(民法180条)。
所持
民法上の所持とは、物が特定の人の支配に属していると認められる客観的な事実や状態を指す。社会通念に基づいて判断され、現実に物を把持している必要はないが、一定の時間的継続性が求められる。
占有意思
物の所持によって得られる利益を自己に帰属させる意思を占有意思という。立法例としては客観主義をとる法域もあるが、日本法は主観主義を採用し「自己のためにする意思」を要件としている。ただし、実際の解釈においては占有意思の要件は大幅に緩和されており、潜在的・一般的なもので足りると解されている。
占有の態様
占有はその態様によりいくつかの種類に分類される。
- 自主占有と他主占有:所有の意思をもつ占有を自主占有、それ以外の占有を他主占有という。
- 自己占有と代理占有:占有代理人を介して物を所持する場合を代理占有という。
- 善意占有と悪意占有:本権がないことを知らないで行う占有を善意占有、知って行う占有を悪意占有という。
- 瑕疵なき占有と瑕疵ある占有:平穏・公然・善意・無過失などの要件の有無によって区別される。
占有権の効力と占有訴権
占有権の効力として、果実取得権や費用償還請求権、損害賠償に関する規定のほか、妨害や侵奪に対して占有権を排除することを請求できる占有訴権が認められている。
占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また本権の訴えも占有の訴えを妨げない仕組みとなっている。
準占有
自己のためにする意思をもって財産権を行使することを「準占有」といい、占有権に関する規定が準用される。典型的な権利としては、知的財産権や漁業権などが挙げられる。
よくある質問
占有権と本権の違いは何ですか?
自主占有と他主占有はどう区別されますか?
準占有とはどのようなものですか?
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参考文献
遠藤浩ほか『民法』2巻《物権》(有斐閣、1996年)
我妻榮、有泉亨、川井健『民法』1巻《総則・物権法》(勁草書房、2005年)
近江幸治『民法講義』2巻《物権法》(成文堂、2006年)