自然災害
雪泥流と雪代のメカニズムおよびその災害
雪崩が大量の水を含むことで土石流化する雪泥流(雪代)の発生メカニズム、富士山をはじめとする各地での主な災害事例について解説します。
📌 主なポイント
- ✓雪泥流は雪崩(スラッシュ雪崩)が大量の水を含んで土石流化した現象である。
- ✓富士山で発生する大規模な雪泥流は一般に「雪代」と呼ばれている。
- ✓川の狭隘部に雪氷が詰まって形成される「アイスジャム(天然ダム)」の決壊も発生要因の一つとなる。
- ✓2018年3月5日に富士山須走口で発生した土石流では、作業員2名が犠牲となった。
雪泥流(せつでいりゅう)とは、スラッシュ雪崩などの雪崩が大量の水を含むことによって土石流化した現象を指す。融雪水による通常の土石流とは区別が難しい場合もあり、斜面から渓流へと流下する過程で渓岸や河床の堆積物を激しく浸食しながら下流へと進む特性を持つ。
発生メカニズムと要因
湿った雪が多く積もる山間部や万年雪が残る山頂部において、集中豪雨などが重なることで発生しやすい。普段は水が流れていない涸沢(からさわ)の上流部などで発生した場合、土砂災害に対する備えが十分に整っていないことが多いため、被害の規模が拡大する傾向にある。また、冬場でも水量が確保されている河川において、水面や岸を覆っていた雪氷が気温の上昇などによって流出し、川の狭隘(きょうあい)部に詰まることで天然ダム(アイスジャム)を形成することがある。この天然ダムが決壊することによっても雪泥流が引き起こされる。
富士山の「雪代」
日本の富士山では、大規模な雪泥流が降雨などを契機として定常的に発生しており、一般に「雪代」(ゆきしろ)と呼ばれている。標高3,000メートルを超える高所から急激に流下するため規模が非常に大きく、流れ下った雪は遠隔地からも明瞭に観測される。特に南西斜面などでは、土砂災害を防ぐための砂防事業による対策が講じられてきた。
主な災害事例
日本国内では小規模な雪泥流が頻繁に発生していると考えられているほか、過去には大きな被害をもたらした事例が記録されている。
- 天保5年の雪代(1834年):1834年6月22日(天保5年5月16日)に富士山で発生した大規模な雪代は、富士北麓の富士吉田市域および富士南麓の富士宮市域の一帯に大量の土砂を流出し、甚大な被害をもたらした。
- 青森県赤石川の災害(1945年):1945年3月23日未明、青森県の赤石川で発生した雪泥流(鉄砲水)により、死者87名を出す惨事となった。
- 2018年富士山須走口の土石流:2018年3月5日、富士山の須走口斜面標高約2,300メートル付近で発生したスラッシュ雪崩が、通称グランドキャニオン付近から土石流へと変化した。これにより「ふじあざみライン」の馬返し付近が寸断され、陸上自衛隊東富士演習場へ流入して作業員2名が死亡したほか、北側へ分流した土石流が東富士五湖道路の須走インターチェンジ付近まで到達した。
よくある質問
雪泥流とはどのような現象ですか?
雪崩やスラッシュ雪崩が大量の水を含むことで土石流化したものを指します。渓流を下る際に河床の堆積物を浸食しながら流下します。
富士山の「雪代」とは何ですか?
富士山の標高3,000メートル以上の斜面から、降雨などを契機に大規模な雪泥流が定常的に発生する現象のことであり、地元では雪代と呼ばれています。
雪泥流はどのような原因で発生しますか?
湿った雪が多く残る山頂部や山間部での集中豪雨や、河川の水面・岸を覆う雪氷が気温上昇で流れ出して狭隘部に詰まり、アイスジャム(天然ダム)を形成して決壊することなどで発生します。
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土石流雪崩天然ダムラハール
参考文献
- 【気象・防災】「アイスジャム」雪泥流の脅威『毎日新聞』朝刊2018年6月1日
- 小森次郎「富士山南東斜面の雪代イベントの特徴と発生予測」『富士学研究』第7巻 1号, 2010年, 22 - 31頁。
- 井上公夫「富士山の大規模雪代災害-天保五年(1834)-の流下経路」『砂防学会誌』第62巻第2号, 2009年, 45 - 50頁。
- 諸橋良, 安間荘, 花岡正明「平成19年3月25日富士山スカイラインを襲ったスラッシュ雪崩」『砂防学会誌』第60巻第2号, 2007年, 45 - 50頁。