セベソ事故:1976年のダイオキシン漏出災害と教訓

📌 主なポイント
- ✓発生日時:1976年7月10日
- ✓発生場所:イタリア・ロンバルディア州セベソ近郊のICMESA工場
- ✓主な汚染物質:2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン(TCDD)
- ✓制度的影響:化学工場の安全規制であるセベソ指令の制定につながった
セベソ事故(Seveso disaster)とは、1976年7月10日にイタリア・ロンバルディア州のセベソ近郊にある農薬製造工場で発生した、大規模な化学プラントの爆発・ダイオキシン類漏出事故である。代表的なダイオキシンである2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン(TCDD)が周辺の住宅地区を含む広範囲に飛散し、環境安全や化学工場の規制に多大な影響を与えた。

事故の背景と化学反応
問題の工場はジボダン社の子会社であるICMESAが所有しており、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン(TCB)に水酸化ナトリウムを反応させて2,4,5-トリクロロフェノール(TCP)を製造していた。製造工程ではエチレングリコールを溶媒として加熱撹拌が行われていたが、反応終了後の冷却や水の注入といった所定の安全手順が十分に実施されないまま週末を迎えた。
その結果、反応釜内の温度が無監視状態で上昇し続け、内部の圧力によってベントラインの破裂板が破損。水酸化ナトリウムやTCPナトリウム塩、溶媒とともに数百グラムから数キログラムのTCDDがエアロゾル状となって大気中に放出した。
事故直後の影響と対応
事故直後の初期対応は混乱を極め、ダイオキシン放出が公表されたのは事故から1週間後であった。汚染地域の土壌表面におけるTCDD濃度に基づき、地域はA、B、Rの3つのゾーンに分類された。最も高濃度に汚染されたAゾーンでは居住が禁止され、住民の強制疎開やフェンスによる完全隔離が実施された。

周辺では家畜や小動物の大量死が発生し、食物連鎖を通じた拡散を防ぐために多数の動物が殺処分された。また、住民の間ではクロロアクネと呼ばれる特有の皮膚炎症をはじめとする健康被害が確認された。
事故の教訓とセベソ指令
この事故は、化学プラントにおける安全管理や危険物管理のあり方に強い警鐘を鳴らした。欧州共同体(EC)は化学工場の重大事故防止に関する厳格な安全規制としてセベソ指令を策定し、のちの改訂を経て現代の工業安全基準の基礎となっている。