タイポグラフィ
斜体(書体デザイン)の概要と歴史的背景

書体の形態のひとつである斜体(オブリーク体・イタリック体)の定義、欧文および日本文における用途や歴史的背景について詳しく解説します。
📌 主なポイント
- ✓斜体とは、水平線を保ったまま垂直線を傾けてデザインされた書体の形態であり、斜字体とも呼ばれる。
- ✓欧文における広義の斜体には、独自の構造を持つイタリック体と、立体を単純に傾けたオブリーク体が含まれる。
- ✓日本語の斜体は、写真植字や電算写植、ワードプロセッサの普及に伴い用いられるようになった歴史的経緯を持つ。
斜体(しゃたい、英: oblique type)とは、書体の形態のひとつであり、通常の正立した書体(立体)の水平線を保ったまま、垂直線を右側へ傾けてデザインしたものを指します。「斜字体」とも呼ばれ、一般的には文字が右へ傾斜している形状を基本とします。

文字の傾きは、正立状態を0度とし、右方向への傾きを正の角度として表現されます。なお、左側に傾けられたものは「左斜体」と称されます。
欧文における斜体の区分
欧文タイポグラフィにおいては、立体と「広義の斜体」との間に明確な区別が存在します。広義の斜体は、主に次の2つの概念に大別されます。
- イタリック体(英: Italic type):ルネサンス期にイタリアで生まれた、独自の構造を持つ手書き風の書体。
- オブリーク体(英: Oblique type):既存の立体書体を機械的あるいはデジタル処理によって単純に右へ傾けた字体。「狭義の斜体」は通常このオブリーク体を指します。

日本語における斜体の扱い
日本語の文字体系には本来イタリック体に相当する歴史的書体が存在しないため、ワープロソフトやコンピュータ上で表現される日本語の斜体は、欧文のオブリーク体と同様に文字を機械的・電算的に傾けたものとなります。

日本語の縦書き時における斜体は、一般に右上がりに傾斜させたものが用いられます。また、縦書きの文章中に欧文単語等を混植する場合、語句ごとに90度回転させて横書きのまま組み込む手法も採られます。
用途と用法
欧文では、立体で構成された文章の中で特定の語句を強調したり、周囲と区別したりする目的で斜体が広く使用されます。主な用途としては以下が挙げられます。
- 語句の強調
- 書名、雑誌名、新聞名などの引用(章や節の見出しには立体が使われます)
- 船舶の名称
- 外国語の挿入
- 専門用語の初出時における解説対象の表記
- 生物学における二名法(属名および種小名の表記)
- 物理量や数学の変数を示す記号
一方、日本語の文章に斜体が用いられることは歴史的に見て比較的稀でした。写真植字の普及期に広告デザイン等で利用されるようになり、のちのワープロの普及によって強調や装飾目的で利用される機会が増加しました。
日本語の斜体書体の例
電算写植やフォントデザインの歴史においては、日本語の斜体書体もいくつか開発されました。代表的なものとして以下の書体が挙げられます。
- スーシャ:細明朝体をベースにした斜体書体であり、写研の電算写植システム等で用いられました。「鈴木さんの斜体」に由来して命名された歴史を持ちます。
- ゴーシャ:ゴシック体をベースにした斜体書体です。
- アローエース:モリサワの電算写植システム向けに開発された斜体書体です。
よくある質問
斜体とイタリック体は同じものですか?
いいえ、異なります。狭義の斜体(オブリーク体)は立体を単に右に傾けたものですが、イタリック体はルネサンス期に生まれた独自の構造を持つ手書き風の書体であり、両者は異なる概念です。
日本語の文章における斜体にはどのような特徴がありますか?
日本語には本来イタリック体に相当する文化的・歴史的書体が存在しないため、コンピュータ上では文字を機械的に傾けたオブリーク体が使用されます。また、縦書きの場合は右上がりに傾けたものが用いられます。
日本語の斜体書体にはどのようなものがありますか?
写研の電算写植システムで用いられた細明朝体ベースの「スーシャ」やゴシック体ベースの「ゴーシャ」、モリサワの「アローエース」などが存在します。
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参考文献
- 雪朱里 (2019年2月19日). “活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く(23) 刀のように鋭い書体「スーシャ」”. マイナビニュース. 2019年9月28日閲覧。