物理化学

仕事 (熱力学)

仕事 (熱力学)
熱力学における「仕事」の概念について、閉じた系と開いた系における違いや、絶対仕事・工業仕事といった基礎知識を解説します。

📌 主なポイント

  • 熱力学における仕事は過程関数であり、系がたどる経路によって値が変化する。
  • 仕事は熱とともに、系の境界を通過するエネルギーの形態の一つである。
  • 系を閉じた系とするか開いた系とするかによって、考慮すべき仕事(絶対仕事や工業仕事など)の扱いが異なる。

熱力学における仕事(しごと、英: work)とは、系がその境界を通過して外部とやり取りするエネルギーのうち、熱以外の形態のものを指す。力学的な意味での力が空間的な変位を伴うときに及ぼす仕事の概念を拡張したものであり、熱力学の基礎をなす重要な過程関数の一つである。

概要と定義

熱力学において、仕事は状態量ではなく過程関数である。すなわち、系がたどる具体的な変化の経路(プロセス)に依存して決まる量であり、状態の変化だけで一意に定まるものではない。

一般に系に出入りする物質として気体を仮定する場合、仕事の現れ方や評価方法は、対象とする系を「閉じた系」として扱うか「開いた系」として扱うかによって異なる。

閉じた系における仕事

閉じた系(物質の出入りがない系)において、境界を通過する仕事の代表例が境界の移動に伴う体積変化の仕事(膨張仕事・圧縮仕事)である。可逆変化や準静的過程を仮定する場合、微小仕事 dW は圧力 p と体積 V を用いて次のように表される。

dW = pdV

この表現で定義される仕事は、物理化学や基礎熱力学においてしばしば扱われる。

開いた系における仕事

流体が常時出入りする開いた系(検査体積)においては、気体の出入りに伴う押し込み仕事や押し出し仕事(pV 仕事)を考慮する必要がある。これにより、得られる仕事の性質が異なってくる。

  • 絶対仕事:閉じた系における境界の移動に伴う仕事。
  • 工業仕事:開いた系において、流体の出入りに伴う押し込み・押し出し仕事を考慮に入れた、装置の軸などを通じて取り出される有効な仕事。

どのような仕事として観測されるかは、仕事を取り出す装置の形式そのものによるのではなく、系をどのように定義し、流体の出入りに伴うエネルギーを含めるかという点に依存している。

よくある質問

熱力学における仕事とは何ですか?
系がその境界を通過して外部とやり取りするエネルギーのうち、熱以外の形態のものを指します。
仕事は状態量ですか?
いいえ、仕事は状態量ではなく過程関数です。変化の経路に依存して値が決まります。
絶対仕事と工業仕事の違いは何ですか?
閉じた系における境界移動に伴う仕事が絶対仕事であるのに対し、開いた系での流体の出入りに伴う押し込み・押し出し仕事を考慮して軸から取り出される仕事が工業仕事です。

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参考文献

アトキンス『物理化学(上)』東京化学同人、2001年。ISBN 9784807909087。
谷下市松『工学 基礎熱力学』裳華房、1971年。ISBN 4-7853-6008-9。
岐美格 他『工業熱力学』森北出版、1987年。ISBN 4-627-61081-5。