法学・政治学

司法の概念と制度的変遷

司法の定義、実質的・形式的意義における違い、そして大日本帝国憲法から日本国憲法における司法制度の変遷について解説します。

📌 主なポイント

  • 司法は、立法および行政と並ぶ国家作用の一つである。
  • 実質的意義の司法は、具体的な争訟について法を適用し宣言して裁定する国家作用を指す。
  • 大日本帝国憲法では行政事件は行政裁判所の所管であったが、日本国憲法では通常の裁判所が管轄する。

司法(しほう、英: Judiciary)とは、立法および行政と並ぶ国家作用の一つである。実質的意義においては法を適用し宣言することにより、具体的な訴訟について裁定することを指すが、形式的意義においては司法府に属する作用の総称である。この国家作用を行う権能を司法権といい、三権分立における行政権・立法権と対比される。

司法の概念

実質的意義の司法

国家作用が作用自体の性質という点に着目して立法・行政・司法に三分類されるときに、これらはそれぞれ実質的意義の立法、実質的意義の行政、実質的意義の概念として区別される。

司法とは実質的意義においては「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用」と定義される。これは近代以降の各国・各時代に通じる司法と司法権の共通項を示したものである。司法と司法権は、近代の権力分立制とともに生成してきた。

国家作用が行政・立法・司法に分離独立するに至った歴史的経緯が異なることもあり、司法と呼ばれる国家作用の内容は各国や時代によって差異が存在する。特に行政と司法との理論的な区別については、権限が与えられている官署の区別に対応しているに過ぎないとの指摘もなされている。

この点が典型的に現れるのは行政事件の裁判に関する扱いである。フランスやドイツなどの大陸法系諸国では、司法とは民事事件・刑事事件の裁判作用を指し、行政事件の裁判を含まない場合がある。これに対し、英米法(コモン・ロー)系の国々では、行政事件の裁判も司法に含まれると解され、通常の裁判所の権能に属する。

形式的意義の司法

司法は形式的意義においては司法府に属する一切の作用を意味する。国家作用がどのような機関に配当されているかという点に着目して分類したものが形式的作用である。例えば、日本における最高裁判所の規則制定権(日本国憲法第77条)は実質的には立法作用であるが、司法権の独立の観点から最高裁判所の権能とされており、形式的意義の司法に含まれる。

日本の司法制度の変遷

大日本帝国憲法における司法

大日本帝国憲法のもとでは、司法権とは民事事件・刑事事件の裁判作用を行う権能を指した。行政事件は通常の裁判所とは別系統である行政裁判所の所管とされていた。また、軍人・軍属などの刑事事件を扱う軍法会議や、皇族の民事事件を扱う皇室裁判所などの特別裁判所も設置されていた。

日本国憲法における司法

日本国憲法においては、英米法系の制度に倣い、行政事件の裁判も通常の裁判所が管轄することとされた(日本国憲法第76条1項、2項)。憲法の下で司法権を行使するのは最高裁判所および法律の定めるところにより設置される下級裁判所であり、特別裁判所の設置は禁止されている。

よくある質問

実質的意義の司法とは何ですか?
具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用を指します。
形式的意義の司法とは何ですか?
実際の国家体制において、司法府に属する一切の作用を意味します。
日本国憲法における司法の特徴は何ですか?
英米法系の制度に倣い、行政事件の裁判も通常の裁判所が管轄し、特別裁判所の設置が禁止されている点に特徴があります。

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参考文献

塩野宏『行政法1 第4版 行政法総論』有斐閣、2005年。
伊藤正己『憲法 新版』弘文堂、1990年。